【主張】ふるさと納税 真に地方を支える制度に


 真にふるさとのための制度としていかなければならない。国も地方も、である。

 ふるさと納税の新制度から除外した総務省の決定は違法だとして、大阪府泉佐野市が取り消しを求めた訴訟の上告審で、最高裁は違法を認め市側勝訴の判決を出した。

 総務省は大失態を直視すべきである。制度設計のずさんさや、自治体を強引に従わせようとしたやり方を猛省しなければならない。

 平成20年に始まったふるさと納税では、応援したい自治体に寄付すると住民税などが控除される。しかし、制度自体が甘く、自治体は過度な返礼品競争に走った。泉佐野市は返礼品に加えインターネット通販大手のギフト券を贈って多額の寄付を集めた。

 制度の見直しは後手に回り、かつ強引だった。昨年ようやく地方税法が改正され、返礼品に基準が設けられた。総務省は新制度から泉佐野市などを除外した。国地方係争処理委員会は再検討を勧告したが総務省は除外を続け、泉佐野市が提訴した。

 最高裁判決は、法は施行以前にさかのぼって適用されないとする原則を踏まえたものといえる。

 改正地方税法施行前の行為で新制度から除外することは、「後出しじゃんけん」のそしりを免れ得ない。国の最初の制度に不備がありながら力ずくで地方を従わせようとした姿勢は、反発を招いても仕方がない。

 もっとも、過度な返礼品が認められないのは言うまでもない。なりふりかまわない泉佐野市のやり方は、眉をひそめさせるものだった。判決も「社会通念上節度を欠いていた」とした。

 人々が地方を応援し、地方は地場産品などで応える。それがふるさと納税の趣旨である。国が適切な制度を作り、地方の健全な運用に任せるのが本来の姿だとわきまえるべきだ。

 寄付する側も返礼品につられていては趣旨のはき違えである。国と地方の対立や損得勘定が目に余るようでは、ふるさとが泣く。

 新型コロナウイルスで打撃を受けた地方を、ふるさと納税の仕組みを使って応援しようとする動きもある。そうした取り組みが本来の姿だろう。

 判決を、国、地方、寄付する側それぞれが本当のふるさとの創生を考えるきっかけとしたい。



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