「のぼる小寺(こてら)さん」(古厩(ふるまや)智之監督)は、ボルダリングに取り組む女子高校生と級友たちが、それぞれが直面する“人生の壁”を登ろうと一歩踏み出す姿を描いた、繊細で穏やかな青春物語だ。主人公の小寺さんを演じるのは、人気アイドルグループ、モーニング娘。出身の工藤遥(20)。これが映画初主演の工藤に話を聞いた。(石井健)
東京五輪で公式種目に追加されたスポーツクライミングは3種目の総合成績で競うが、そのうちの1種目がボルダリングだ。高さ4メートルの壁を登れた回数を数える。
工藤は、モーニング娘。の中心的立場で歌い踊り、女優としては特撮ドラマのヒロインの一人を演じた。
「お話をいただいたときは、ボルダリング? 面白そうと軽い気持ちで引き受けましたが、始めてびっくり。なんて難しいんだろう」
だが、3カ月、練習を積んで、劇中のボルダリングの場面は全て自分で登った。「負けず嫌い」と自己分析するが、「小寺さんと私が重なる部分」とも。
小寺さんは、高校のクライミング部で黙々と壁を登る。登ること以外目に入らない小寺さんにひかれる卓球部の近藤。恋の行方は物語の軸だが、工藤は「近藤くんは、もどかしい。アクション起こしなよって思った」と笑う。
「それぐらい静かな作品。派手な映像もない。言葉数も少ない。でも、それが魅力。いろんな感想を持っていただけるはず」
だが、古厩監督は、小寺さんと近藤のすてきな場面を用意している。