プーチン大統領の功績は、ソ連崩壊後の混乱を収拾して大国を再興し、ロシアに初めて消費社会を定着させたことにあるが、歴史的使命はすでに終わったのではないか。資源依存から脱し、経済を多角化して社会の活力を高めるには、自由で民主的な発想が不可欠であり、旧来の強権統治では限界がある。次世代のフレッシュな人材に委ねた方がいい。
大統領が1月に改憲を発表した時点では「院政」を想定していたようだが、3月に続投可能に改憲案を修正した背景について、報道官は新型コロナウイルスの問題と国際環境の緊迫を挙げていた。後継問題をめぐるさまざまな動きがあり、政権の安定を重視したかもしれない。
現在のロシアはプーチン氏が一代で築いた体制であり、プーチン氏が去ると、体制が瓦解(がかい)する恐れがある。それを阻止するため、憲法に保守的要素を盛り込み、プーチン路線の永続化を図った。プーチン氏個人は権力欲が強いとは思えず、2024年の任期満了で退陣を望む可能性もあるが、利権を掌握する政権周辺がそれを許さないだろう。
当初はプラグマチストだったプーチン氏も、長年の欧米との対立や国益重視を経てすっかり保守イデオローグに変身した。現体制の長期化は、利権の温存や閉塞(へいそく)感につながり、若者の不満が高まりそうだ。ロシアは比較的若い世代の人口が多く、世代交代で西欧化が進む可能性がある。ただし、地政学は変わらないので限界も多い。(談)