新型コロナウイルスが新興国や途上国で猛威を振るっている。2カ月ほど前には欧米先進国がコロナ蔓延(まんえん)の中心地だったが、ここにきて新興5カ国(BRICS)を形成するブラジルやロシア、インドなどでの感染拡大が目立つ。貧富の差が大きく、医療体制の脆弱(ぜいじゃく)な新興国・途上国で感染が広がれば、世界での収束は見通せない。経済優先の姿勢が状況悪化を招いている側面も指摘されている。
■「風邪」と言い放つブラジル大統領
米ジョンズ・ホプキンズ大によると、ブラジルの感染者は累計約153万9千人、死者は約6万2千人でともに世界で2番目に多い。1日の新規感染者は4万人台で推移している。
ブラジルの右派、ボルソナロ大統領は新型コロナ感染症を「ただの風邪」だとし、各自治体が独自に実施する商業施設の閉鎖や外出自粛要請をたびたび批判してきた。国家規模での外出規制やウイルス検査は行われず、「無作為」が感染を広げたのは否めない。
規制を導入してきた一部の州政府などにも、市民や経済界の声を受けて商業施設の再開に踏み切るところが出ている。現地からの報道によると、貧困層の多い地域での感染拡大が深刻で集中治療室(ICU)の稼働率は高止まりしている。
■プーチン露政権は統計操作?
感染者が累計約67万人と世界3位のロシアでは、死者数が約1万人にとどまり、欧米主要国よりも致死率が低い。国内外の一部メディアからは統計操作の疑いが指摘されている。
プーチン露政権は、1日の新規感染者が数百人規模だった3月末に企業活動の制限を発表。5月上旬には新規感染者が連日1万人を超えていたが、それでも同月12日に制限を解除した。