夜間に勢いを増した雨、逃げる間もない速さで押し寄せた濁流。熊本県南部を襲った豪雨の被災地では、濁流で道路が分断されて避難がままならず、今も救助を待つ人がいる。一方、命からがら避難所にたどり着いた人々は、無事の再会を喜び合った。
■助けに行けず…
隣人が屋根の上で1人、助けを待っている。そう聞かされても、腰の高さまで迫る激しい濁流で歩けなくなった市街地を前に、ただ無事を祈るしかなかった。
球磨(くま)川沿いを中心に、甚大な被害が出た熊本県人吉(ひとよし)市。下林町の高校教員、村上崇さん(43)は4日午前5時ごろ、「ゴー」という轟音(ごうおん)で目が覚め、同居する母(79)とともに、車で避難所となった「人吉スポーツパレス」に向かった。
無事に到着後、ほどなくして隣人の自営業、堀川美智さん(83)が屋根の上で助けを待っていると聞き、慌てた。平屋建ての家に1人で暮らす堀川さんには、時々食事を届けたりしてきた。いつも元気な堀川さんだが、平屋の家では「垂直避難」も難しい。