中国派遣の国安顧問、香港長官を監督 習氏トップの指揮系統明確化





「国家安全維持委員会」の顧問に任命された駱恵寧氏

 【香港=藤本欣也】「香港国家安全維持法」(国安法)のもと、香港政府に派遣された「国家安全事務顧問」の駱恵寧(らく・けいねい)氏が、政府トップの林鄭月娥(りんてい・げつが)行政長官を指導・監督する権限をもっていることが明らかになった。習近平国家主席の意向を反映しやすい指揮命令系統が構築された形で、習政権による香港直接統治が強化されることになる。

 駱氏は、中国政府で香港問題を担当する「香港マカオ事務弁公室」の副主任を務めている。同時に、中国政府の香港出先機関「香港連絡弁公室」のトップとして、香港政府との連絡調整などに当たってきた。

 駱氏は今回、国安法に基づき、香港政府の「国家安全維持委員会」に、中国政府から国安事務顧問として派遣されることになった。

 香港政府の国家安全政策を担う同委員会は、林鄭氏が主席を務め、司法、警察、政務、財政、入境管理などの各部門トップで構成されている。

 国安事務顧問は、同委員会に「意見を提供する」などと国安法に規定されているだけだったが、中国系香港紙、文匯報(ぶんわいほう)は4日付紙面で、行政長官を「指導・監督」すると明記した。同紙は香港連絡弁公室の管理下にあり、中国政府の見解を代弁することで知られる。

 1月に香港連絡弁公室トップの主任に就任した駱氏は、青海省や山西省の共産党委員会書記を歴任。従来、官僚タイプが務めてきた同主任に、地方トップを歴任した人物が就任するのは異例で、香港は駱氏と林鄭氏の「2トップ体制」になるとの見方もあった。

 しかし今回、上下関係が明確になり、駱氏は単なる“目付け役”ではなく、司令塔として林鄭氏を指導していく方針が示された。香港紙、蘋果(ひんか)日報は、駱氏が事実上の「香港特別行政区党委書記」になったと伝えている。

 この駱氏の上司に当たるのが、香港マカオ事務弁公室主任の夏宝竜氏だ。習氏が浙江省党委書記だった2000年代に副書記を務め、習氏の腹心とされた人物である。香港の政務・司法・警察など全般に、習氏の意向をいきわたらせることが可能になったといえる。



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