人口減少時代の農山村の土地利用を考える農林水産省の有識者検討会の第2回会合が7日、省内で開かれ、農山村で増える耕作放棄地(荒廃農地)対策として「牛の放牧」の重要性が専門家から提起された。低コストで手がかからず、山の斜面でもできるなどメリットが多いという。
人口減・高齢化で農業の担い手が減る中、中山間地域を中心に農地として維持することが難しい土地への対策として、検討会はさまざまな可能性を模索。この日は、耕作放棄地を農地のまま維持する方策の一つとして、一般社団法人「日本草地畜産種子協会」(東京)の放牧アドバイザー、梨木守氏が牛の放牧地へ転換することの有用性を説明した。
農水省によると、平成30年時点で繁殖用の肉牛を中心に全国で40万頭が放牧。また、耕作放棄地では30年ほど前から放牧が始まり、30年時点で全国に3158カ所あり、合計の面積は猪苗代湖(福島県)とほぼ同じ約100平方キロにのぼるという。
梨木氏は「低コストで、傾斜地でもできる。餌を用意する必要もなく、排せつ物の処理も不要。牛の健康にもよい」と利点を紹介。一方で、「耕作放棄地は点在しており、まとまった土地の確保が難しい」「近隣住民への丁寧な説明、同意が必要」などと課題を挙げた。
委員のうち東京大の安藤光義教授は、放牧の際に農業用排水路の工事が必要な場合があるとの指摘に触れ、「放牧に限らず、維持管理の費用がかからない粗放的な土地利用を実現するために、どんな追加投資が必要なのか。それぞれの土地利用に応じて検討してはどうか」と話した。