米ヒューストン・バレエのプリンシパル(最高位ダンサー)、加治屋百合子が新型コロナウイルスの影響で苦境にある日本人アーティストを、支援する活動を始めた。ウェブ上で世界的ダンサーらと対談やレッスンを有償で行い、受講料を全額、舞台芸術支援の基金に寄付する。賛同者も世界的広がりを見せている。(飯塚友子)
日本に思い、届けたい
このプロジェクトは「ハート・フォー・アーティスト」。5月27日からビデオ会議アプリ「Zoom(ズーム)」を使用し、オンライン対談とレッスンを始めた。これまで加治屋と独ハンブルク・バレエのプリンシパル、菅井円加(まどか)との対談(参加料1000円)や、加治屋がかつて所属していたアメリカン・バレエ・シアター(ABT)のバレエマスターによるレッスン(同2000円)などを実施した。
加治屋と菅井との対談を視聴したが、ともに自宅から普段着で登場し、けがなど試練への対応や、視聴者からの質問に答えるうち、予定を30分超える90分も会話が盛り上がっていた。華やかな舞台とはまた違った、2人の素顔が垣間見える内容だった。
レッスンとトークは今後も随時、継続予定で、収益は全額「舞台芸術を未来に繋ぐ基金」に寄付される。
加治屋は、「日本人として、いつも母国を思っています。舞台がなくなり不安定な状況にある日本人ダンサーに今、何ができるかを考え、とにかく動く決断をした。ファンの視聴や参加が、日本の舞台芸術の支援につながる。ダンサーとファン双方がハッピーになれるよう、日本に思いを届けたい」と力を込める。
世界から賛同者、続々
ABT時代から、数多くの作品で主演してきた加治屋だが、米国でコロナ禍が収束していない現状で、舞台の予定は立ってない。それでも支援に動いたのは2017年、地元ヒューストンを大型ハリケーンが襲った際、世界から寄せられた応援に励まされたからだという。