高市政権1カ月:注目すべきサプライズ官僚人事の裏側

高市早苗政権が発足して1カ月が経過し、その中核を支える官僚たちの顔ぶれに注目が集まっています。特に、従来の慣例を破るかのような「サプライズ人事」が相次ぎ、永田町・霞が関ではその動向が熱く議論されています。本記事では、月刊文藝春秋の「霞が関コンフィデンシャル」から、高市政権の主要な官僚人事とその背景について詳しくご紹介します。これらの人事は、高市首相の政権運営における意図や優先順位を如実に示していると言えるでしょう。

首席秘書官に抜擢された「人脈の広さ」:飯田祐二氏(元経産事務次官)

今回の人事の中でも特に大きな注目を浴びたのは、首席秘書官に抜擢された前経済産業事務次官の飯田祐二氏です。飯田氏は昭和63年に旧通産省に入省。ある経済産業省幹部は彼を「おおらかでざっくばらんな人柄」と評し、他省庁幹部や自民党商工族の大物とも気さくに交流するなど、「人脈が広い」ことで知られています。この異例の抜擢は、高市首相が省庁間の連携や幅広い人脈を重視していることの表れと見られています。

高市政権の首席秘書官に抜擢された飯田祐二氏高市政権の首席秘書官に抜擢された飯田祐二氏

財務省からの「陰の首相秘書官」:岩佐理氏(主税局審議官)

これまで首相補佐官の秘書官に人材を送ってこなかった財務省が、今回新たな動きを見せました。日本維新の会の遠藤敬氏が兼務する国対委員長兼首相補佐官の秘書官として、主税局審議官に就いたばかりの岩佐理氏を送り込んできたのです。遠藤氏の役割から見ても、岩佐氏は事実上「陰の首相秘書官」とも言える重要な立場にあります。これは、財務省が高市政権において、これまで以上に政権中枢への影響力を行使しようとする意図の現れとも解釈できます。

NSS新局長に市川恵一氏:林総務相との「因縁」とは

国家安全保障局(NSS)のトップである岡野正敬前局長(昭和62年、外務省)が、政権発足と同時に突然の退任となりました。後任の新局長には、インドネシア大使の発令を受けたばかりの市川恵一氏(平成元年、外務省)が就任。市川氏は「常にポケットチーフを欠かさず、ほのかなコロンの香りを漂わせる典型的エリート外務官僚スタイル」と評される一方で、永田町や霞が関では彼に反感を抱く向きも少なくないと言います。その筆頭格が林芳正総務相で、外務省関係者によれば「昨日今日の因縁ではない」と語られるほどの確執があるようです。この人事は、高市政権の外交・安全保障政策にどのような影響を与えるのか、今後の動向が注目されます。

警察庁出身の官房副長官:露木康浩氏が示す治安対策への注力

官房副長官の人事でもサプライズがありました。今年1月に警察庁長官を退官した露木康浩氏(昭和61年、警察庁)が、10月21日付で事務担当の官房副長官に就任したのです。警察庁出身者の登用については、「高市首相の母が奈良県警の警察官だったこともあり親近感があるのでは」との指摘があるほか、「首相は以前から治安対策に熱心だった」と警察庁幹部は語っています。この人事は、高市政権が治安対策を重要政策の一つと位置づけていることを強く示唆しています。

まとめと今後の展望

高市政権の官僚人事は、これまでの慣例にとらわれず、首相の意向や政策の優先順位を明確に反映した「サプライズ人事」が特徴的です。首席秘書官の飯田氏、財務省からの岩佐氏、NSS局長の市川氏、そして官房副長官の露木氏といった主要ポストへの任命は、それぞれが持つ経験、人脈、そして時に存在する確執までもが、今後の政権運営に大きな影響を与えることでしょう。これらの人事を深く理解することは、高市政権の戦略と課題を読み解く上で不可欠であり、日本政治の未来を占う上で重要な鍵となります。

参考文献

  • 「文藝春秋」編集部/文藝春秋 2025年12月号「霞が関コンフィデンシャル」