九州を中心に被害を出した豪雨災害で、政府はスピード重視の対応を際立たせている。激甚災害指定や即応予備自衛官の招集を前倒ししたほか、13日には4千億円超の対策パッケージのとりまとめを表明した。今回の災害では計68人が亡くなったが、政府は直近の危機対応で培った経験も踏まえ、「できることはすべてやる」(安倍晋三首相)姿勢で取り組む考えだ。
今回の豪雨災害では、政府は被害が明らかになった4日、武田良太防災担当相を熊本県に派遣した。被災地からの要請を待たずに物資を送る「プッシュ型支援」も行った。5日には水やお茶などの飲料が熊本県の流通拠点に到着。6日にはパック入りご飯など食料や段ボールベッド、携帯電話の充電器も届いた。
即応予備自衛官の招集は発災から2日後だった。平成30年6、7月の西日本豪雨では、発災から13日後の招集だったことを考えればスムーズだったといえる。
10日には、被災自治体の復旧活動に財政的裏付けを提供する激甚災害への指定見込みも表明した。内閣府の幹部は「被害状況が把握しやすい地震は対応が早く、大雨は遅い傾向があるが、今回は地震並みだった」と話す。
一連の対応について、内閣府の防災担当者は「慣れ」を指摘する。過去1年間でも昨年9、10月に相次いだ台風被害やさらに新型コロナウイルスと国にとっての緊急事態が続いた。この間、閣僚も職員も変わっておらず、対応の練度は上がったという。
安倍政権にとって危機管理はセールスポイントの一つだが、新型コロナウイルスへの対応では「後手に回った」との批判もあった。今回の豪雨災害でも、対応が「後手に回った」などと批判を受ければ、政権にとって痛手になる。首相は13日、視察先の熊本県人吉市で記者団にこう強調した。
「これからも先手、先手で必要な物資を少しでも早く届けられるように、安心して暮らせる住まいに一日も早く移れるように全力を尽くす」(市岡豊大、児玉佳子)