首相も14日間待機? 要人往来の再開に水際対策の壁





出邸する安倍晋三首相=16日午前、首相官邸(春名中撮影)

 新型コロナウイルスで停滞する要人往来に再開の機運が出てきた。ビーガン米国務副長官の来日が問題なく実現したためだ。ただ、日本からの訪問は、帰国後に14日間の待機を強いられるなど課題も残る。要人は水際対策の例外とするのが国際的な流れだが、日本では感染リスクや世論への配慮から慎重な声も多い。

 「いつでもワシントンに来てくれ」

 9日夜、来日したビーガン氏は、東京都内で夕食をともにした秋葉剛男外務事務次官にこう語りかけた。北朝鮮や香港情勢、日本のミサイル防衛のあり方など日米が膝詰めで協議すべき課題は多い。日本としても首脳や高官を早期に派遣したい意向は同じだ。

 ただ、日本政府は全ての入国者に自宅やホテルでの14日間の待機を求めている。要人であっても帰国後は2週間にわたり職務を封じられる。米国に限らず、外国訪問には二の足を踏まざるを得ないのが現状だ。

 先進7カ国(G7)首脳会議の米国開催が8月末から9月中旬の間で調整されている。安倍晋三首相も出席する意向だが、現行の水際対策を厳格に適用すれば、帰国後は首相公邸などで待機することになる。政府関係者は「首相の14日間の待機は厳しい。回避できる方法を探りたい」と語る。

 政府はビーガン氏の来日にあたり、PCR検査の実施や訪問先の限定、公共交通機関の不使用などを条件としたが、14日間の待機は特例として求めなかった。帰国した政府要人にも同様の措置を認めるべきだとの意見もある。

 対面外交を再開している欧米では要人の待機を免除するケースが目立つ。外務省によると、6月にロンドンで行われた英仏首脳会談後、帰国したマクロン仏大統領が行動を制約されることはなかった。日本から米国に帰国したビーガン氏も同様だ。

 ただ、日本では要人往来をきっかけに感染が広がることへの懸念は根強い。「要人だけは例外とするのに国民の理解が得られるのか」(政府関係者)と世論の反発を不安視する声もある。

 それでも、慎重論に配慮し過ぎれば日本が国際社会の潮流に取り残されかねない。60カ国もの要人と電話会談やテレビ会議を重ねた茂木敏充外相は、10日の記者会見で業を煮やしたようにこう主張した。

 「要人往来は毎日起きるわけではないし、多くの人数を伴うものでもない。通常の水際対策とは別途の枠組みを検討すべきだ」

(石鍋圭)



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