東京発着除外でGoTo急転、政府の誤算



安倍晋三首相との面会を終えGoToトラベルキャンペーンの実施について記者団の質問に答える赤羽一嘉国交相(右)と西村康稔経済再生担当相・社会保障改革担当相=16日午後、首相官邸(春名中撮影)
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 政府が観光支援事業「Go To トラベル」の対象から東京都を外す方針に転じたのは、東京での新型コロナウイルスの感染増を受け、旅行によって感染が全国に広がる懸念をぬぐい切れなかったためだ。一方で、22日の開始は堅持し除外対象を首都圏全体や関西圏などには広げなかった。感染防止と社会経済活動を両立させるバランスの取り方が、極めて難しいことが改めて浮き彫りになった。

 「仕方がない。東京が外れると(経済)効果が落ちるが、安心感が出る」。安倍晋三首相は16日、東京都を対象外とする方針について周囲にこう語った。

 新型コロナ感染者の多くは無症状だ。知らぬ間に地方や高齢者に感染が広がり、医療崩壊につながる危険性も指摘されていた。地方の首長からは「人災になる」といった声もあり、全国一律の開始には反対する意見が目立った。公明党の山口那津男代表は16日の中央幹事会で「東京などについては実施を慎重に対応してほしい」と求めた。


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 「Go To」を経済回復に向けた目玉と位置付けていた政府にとって、東京の感染増は誤算だった。小池百合子都知事は15日、都民に都外への不要不急の移動自粛を要請したことを踏まえ「フルスペック(全てを満たすこと)にならないのでは」と述べていた。確かに、日本の10%を超える人口が集中している東京の除外により、政府が見込んだ経済効果は完全には望めない。

 政府高官は「これまでの感染数をみて、16日に判断した」と明らかにした。国土交通省幹部は「都民にも『自分たちが旅行しても歓迎されないのではないか』という思いがあり、納得してもらえるのではないか。一定数キャンセルは出て、旅行関連業者には気の毒だ。『東京問題』を解消し、東京を対象にできるようにしていきたい」と語った。

 一方で、政府は22日の開始は堅持した。23日からの4連休と夏休みを期間に含める狙いで、政府の観光振興の旗振り役を担ってきた菅義偉(すが・よしひで)官房長官が主導した。周囲には「時期を遅らせたら意味がない」と話していた。菅氏の影響力が強い神奈川県や千葉県が対象外とならなかったのも、菅氏の働きかけがあったとみる向きがある。


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 菅氏は16日の記者会見で「支援を行うことで、社会経済を回復させ、地域が厳しい状況から脱却することができればよい」と意義を強調した。小池氏は同日、都庁で記者団に「国の方で判断したことだと思う。都民、国民への説明が求められるのではないか」と述べた。(沢田大典、大島悠亮)

【用語解説】Go To トラベル

 新型コロナウイルス感染症で打撃を受けた業種を支援する政府の「Go To キャンペーン」の一つ。観光関連の予算は約1兆3500億円。国内宿泊、日帰りツアー代金の50%を国が支援する。35%分の代金割引から始め、残る15%分は9月以降、旅先で買い物、飲食に使える地域共通クーポンを配る。



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