九州に甚大な被害をもたらした豪雨災害は18日で発生から2週間となった。鉄道設備も被害を受け、線路が大量の土砂の流入で埋まったり、鉄橋が流出したりするなど、多くの路線で復旧の見通しがたっていない状況だ。地域住民の通勤や通学、観光地を支えてきた「九州の足」の復活が待たれている。(石橋明日佳、入沢亮輔、西山瑞穂、花輪理徳)
コロナ渦乗り越えた矢先
「信じられない」。九州南西部の八代(熊本)-川内(鹿児島)の海岸沿いを走り抜ける「おれ鉄」の愛称で親しまれる「肥薩おれんじ鉄道」。最も大きな被害が出た熊本県芦北町の佐敷(さしき)-海浦(うみのうら)間の惨状に、同社の原田幸二さん(59)は絶句した。
おれ鉄では、45カ所で土砂の流入や冠水、線路を支える砂利の流出などの被害が出た。全線116・7キロのうち、約半分にあたる49・6キロが不通となった。車両の被害は免れたが、運行再開のめどは立たない。
おれ鉄は学生を中心に、年間110万人が乗車する地域の足だ。また、同社が運行する観光列車「おれんじ食堂」は、車内で地元食材を使ったイタリアンを楽しめるとあって観光客にも人気が高い。
おれんじ食堂は新型コロナウイルスの影響で3月下旬から運休を余儀なくされた。車両の定期検査を終え、7月末から4カ月ぶりに再出発する予定だったという。同社の出田(いでた)貴康社長(63)は「コロナだけなら何とかなったが出ばなをくじかれた。オンシーズンに営業できないのはつらい」と表情を曇らせる。
そんな中、豪雨の発生直後から、鉄道ファンから「また美しい景色を見に乗りに行く」といった励ましの連絡や寄付の申し出が相次いだ。出田社長は「愛されている路線だと実感した。安全を第一に早期復旧を目指したい」と話す。