【カイロ=佐藤貴生】シリアで19日、国会(定数250)選挙が行われた。アサド大統領の与党バース党や同氏支持派の勝利が確実視されている。10年目に入ったシリア内戦で、アサド政権はロシアやイランの支援により反体制派武装勢力への攻勢を強め、全土の約7割を掌握したとされる。強権統治が今後も続く見通しだ。
AP通信などによると、選挙には約1700人が立候補した。投票は政権の支配地域に限定して実施され、反体制派武装勢力の最後の拠点である北東部イドリブなどは除外された。内戦発生で周辺国に避難した約660万人の難民も投票には参加していない。
アサド氏と妻のアスマ夫人は19日、新型コロナウイルス感染防止のためマスクを着用して首都ダマスカスで投票した。公表されているシリアの感染者は約500人、死者は25人だが、実際はさらに多数に上るといわれる。国会選はコロナ感染拡大を受けて4月以降、2度にわたり延期された。
アサド氏は今月で大統領就任から20年となった。統治態勢は揺るがないものの内戦の長期化で経済は破綻。国連は国民の8割が貧困下で暮らしているとし、「未曽有の飢餓の危機」に直面していると警告した。6月上旬には政権の支配地域である南部スワイダで異例の抗議デモも起きた。
米国は同月、国民の大量殺害などの責任が問われている政権中枢の資金源を断つとして、アサド夫妻や軍部隊などを対象に経済制裁を発動した。現地通貨の価値は急落、日用品の価格は急騰している。