日本は尖閣諸島(沖縄県)に迫る危機を自覚し、守りを一層強化する時にきている。
尖閣周辺海域で、中国海警局の公船が連日徘徊(はいかい)し、23日には過去最長の101日連続となった。このうち領海侵入は計11日を数えている。
5月には領海に侵入した中国公船が、付近で操業していた日本漁船を長時間追尾した。その後も日本漁船に接近し、海上保安庁の巡視船が漁船を守ってきた。中国側は尖閣を自国領と言い張り、「違法操業」の漁船を取り締まったと強弁した。
尖閣は日本固有の領土である。中国による領有権の主張は正当性がなく、中国海警局に尖閣海域で法執行する権利はない。直ちに尖閣海域から出ていくべきだ。
今回の徘徊は新型コロナウイルス禍のさなかの4月14日に始まった。中国の執拗(しつよう)な行動は、純然たる平時でも有事でもないグレーゾーンの対日侵略といえる。このままでは日本は不意を衝(つ)かれて、尖閣の島と海を失う恐れがある。
菅義偉官房長官は22日の会見で100日となった中国公船の居座りについて「極めて深刻に考えている。緊張感を持って関係省庁と連携し、警戒監視に万全を期す。毅然(きぜん)とした態度で対応したい」と述べた。外交ルートで抗議しているとも語った。
言葉が空回りしている。本当に深刻にとらえているのか。
中国公船の長期徘徊や領海侵入の都度、政府は似たような発言を繰り返すばかりで中国を止められなかった。反省が必要である。
明らかになったのは、自衛隊の後詰めのもと、海保巡視船が尖閣海域で対処するという従来の対応だけでは、中国の攻勢を止められず、事態は悪化し続けている、ということだ。
政府は及び腰の姿勢を改め、外交や自衛隊をもっと活用したほうがいい。
安倍晋三首相は、海警局の不法行為を棚上げしたままでの関係改善はありえないと表明すべきだ。上陸しての環境調査や自衛隊を含む有人化も急いでほしい。
米政府は尖閣をめぐる中国の行動を批判している。日米安保条約の下、尖閣の久場島と大正島は昭和47年から在日米軍に射爆場として提供されてきたが長く使用されていない。自衛隊と米軍が共同演習に用いて、実効支配を一層明確に示すのも有効な方策である。