1時間雨量が50ミリ以上という短時間に強い雨が降るケースが、約30年間で1・4倍に増えている。「滝のよう」に降り、傘は全く役に立たず、車の運転も危険というほどの雨だが、現状では事前予測にも限界がある。リスクは土砂崩れなどが起きる山間部だけではない。地下街が発達した都市部でも警戒が必要だ。「治水対策の見直しが必要」と専門家。想定外の豪雨はいつ、どこで起きるか分からない。(桑村朋、土屋宏剛)
九州豪雨も予測できず
深刻なリスクを内包する危険な雨は近年、増加傾向にあるという。
〈非常に激しい雨〉と表現される1時間雨量が50ミリ以上の雨。気象庁によると、平成22~令和元年の10年間では年平均で327回発生している。統計を取り始めた昭和51~60年の10年間では同226回。比較すると、約1・4倍に増えている。地球温暖化による気候変動が影響したとみる専門家も多い。
予測で被害を軽減できるとの見方もあるが、現状では課題もあるようだ。
防災科学技術研究所(茨城)などのチームは2年前から、豪雨をもたらす「線状降水帯」の予測実現へのプロジェクトを開始。だが、非常に局地的な現象であり、観測データが不足するなどしているため、予測精度は高くないという。
予測の難しさは、今月九州各地を襲った豪雨でも同様だった。
気象庁は3日午後の段階で熊本県内の翌4日午後6時までの24時間降水量を多い地域で200ミリと予想。だが実際は予測困難な線状降水帯が発生し、同県水俣市や湯前町(ゆのまえまち)で予想の2倍を超える441・5ミリが観測された。気象庁の関田康雄長官は15日、「予測値を大きく上回り、重く受け止める」と述べた。
病院・役場の移転も
「科学的予測に基づく備えをしなければ豪雨災害を防げない」と指摘するのは京都大学防災研究所の中北英一教授。「堤防やダムの強化も必要だが、それだけでは不十分」だと訴え、治水の考え方の見直しを求める。
相次ぐ豪雨災害に、国土交通省は官民一体で「流域治水プロジェクト」に取り組む。全国109水系を対象に今年度、堤防強化といった従来型整備に加え、住宅の移転促進や避難行動の強化など、ハード・ソフト両面での対策を進める。