【本ナビ+1】キャスター、タレント・ホラン千秋 人それぞれの「正義」秘めて

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『奈落で踊れ』月村了衛著(朝日新聞出版・1900円+税)
『奈落で踊れ』月村了衛著(朝日新聞出版・1900円+税)
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 ■『奈落で踊れ』月村了衛著(朝日新聞出版・1900円+税)

 20世紀の終わりに、大蔵省(現財務省)を揺るがせた前代未聞の事件の話は私も伝え聞いていた。官僚の歴史のなかでも最も下衆(げす)な部類に属するスキャンダルとして。帯に<前代未聞の官僚ピカレスクロマン>とある本書は、そんな実在の事件を想起させる道具立てで紡がれた、緊迫感とユーモアに満ちた小説だ。

 1998年、「官庁の中の官庁」といわれた大蔵省を激震が襲う。怪しげな「ノーパンすき焼き店」での金融機関からの過剰接待の発覚だ。捜査のメスが入り、マスメディアや国民からは非難と嘲笑の嵐。何とか処分を免れられないか-。接待を受けて戦々恐々とする同期たちにそう泣きつかれ、省内きっての秀才にして“超変人”でもある文書課課長補佐・香良州(からす)圭一は立ち上がる。これを機会に、緊縮財政へと突き進む省内世論を逆転させる、という野望を胸に秘めて…。

 脚本も手掛けてきた著者らしいテンポのいい場面転換と会話にぐいぐい引き込まれる。キャラクターもみな魅力的で、二枚目の暴力団幹部と敏腕女性政治家との恋愛模様にはとにかく笑った。かと思えば、鉄面皮の主流派官僚と香良州との緊張感のあるやりとりも出てくる。そうした緊張と緩和が巧みに織りなされていて、飽きさせないのだ。


ホラン千秋さん
ホラン千秋さん
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 自分を守るためなのか。組織防衛のためなのか。はたまた、日本という国の未来のためか-。心の奥に秘めている「正義」の形は人それぞれだと思う。香良州が自らの正義のために下した決断を勝利ととらえるか、敗北ととらえるか、それも最終的には読者に委ねられている。勧善懲悪の物語とはいえ、そんな多面的な読み方ができるのもまた面白い。

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