英王室は5日、英国で広く愛された王族の一人であるケント公爵夫人キャサリン・ワースリーが、92歳で逝去したことを発表しました。夫人は4日夜、ケンジントン宮殿にて家族に囲まれ、安らかに息を引き取ったと伝えられています。この訃報は、長年にわたり公務に献身し、多くの人々に親しまれてきた公爵夫人の生涯を振り返る機会となっています。
英王室からの声明とチャールズ国王らの追悼
王室の声明は、「深い悲しみとともにケント公爵夫人の死去を発表する」と述べ、その人間性と公務へのひたむきな姿勢を称えました。チャールズ国王とカミラ王妃をはじめとする王室メンバーは、公爵夫人が生涯を捧げた慈善団体への献身、音楽への深い情熱、そして特に若者たちへの共感を記憶にとどめるだろうと表明しています。英国のスターマー首相も王室一家に心からの哀悼の意を伝え、公爵夫人を「最もひたむきに働いた王族の一人」と評し、「すべての行動に思いやりと品位、人間味があった」と故人を偲びました。
服喪期間と葬儀の準備
チャールズ国王は、公爵夫人の葬儀の日まで続く服喪期間を承認しました。葬儀の詳細や参列者については現時点では未公表です。宮殿の上には半旗となったユニオンジャックが翻り、伝統的な額入りの死亡告知が宮殿の柵に掲示されるなど、王室全体で深い悲しみが示されています。この服喪期間中、王族や職員は葬儀まで特別な服装を着用し、公務に当たる兵士や王室厩舎の職員も黒い腕章を着けることになります。
「人間味」溢れる公務とウィンブルドンの記憶
ケント公爵夫人は2002年に王室の公務から退いたため、現代の王室ウォッチャーにはあまり馴染みがないかもしれません。しかし、彼女は英国や世界のテニスファンの間で、ウィンブルドン選手権の女子シングルス決勝で長年にわたり優勝トロフィーを授与した人物として、強く記憶されています。その温かい人柄と、選手たちへの親身な対応は、「人間味」溢れる王族として多くの人々に愛されました。
ケント公爵夫人キャサリンが2000年5月にフラワーショーに出席する様子。彼女の慈善活動と公務への献身を示す一枚。
キャサリン・ワースリーとしての生涯
公爵夫人は、ヨークシャーの貴族の家にキャサリン・ルーシー・メアリー・ワースリーとして生まれました。彼女は1956年、北イングランドの兵舎に滞在していた将来の夫、ケント公エドワード王子と出会い、5年後の1961年に結婚しました。エドワード王子は故エリザベス女王のいとこにあたる人物です。結婚後、彼女はケント公爵夫人となり、長年にわたり英国王室の一員として国内外で重要な役割を果たしました。
ケント公爵夫人の逝去は、英国王室にとって大きな損失であり、彼女の功績と献身は今後も長く記憶されることでしょう。その温かい人柄と、公務への真摯な姿勢は、多くの人々に感動を与え続けました。
参考文献:
- CNN. “Duchess of Kent, one of Britain’s most loved royals, dies aged 92.” (Yahoo!ニュース掲載記事に基づく)