トルコのエルドアン大統領が最大都市イスタンブールにある世界遺産の「アヤソフィア」の位置付けを博物館からモスク(イスラム教礼拝所)に変更し、国内外で波紋が起きている。トルコのメディアでは、モスク化を支持する論調がある一方、宗教間の摩擦を懸念する声もある。批判の声が多いフランスでは、トルコとの歴史的関係を振り返りながら宗教を利用した権力者の動きをメディアが論じている。
≪ポイント≫
・トルコ側は「主権と名誉の問題」と主張
・バルカン半島の遺跡にも悪影響の可能性
・仏側は「誰にも尻込みをしない」と批判
・宗教を使った権力固めに対し厳しい視線
トルコ 「国父」超え政権延命図る
トルコの世界遺産、アヤソフィアの「モスク化」決定について、エルドアン政権寄りのトルコ英字紙デーリー・サバハ(電子版)は13日付の論評記事で「国家主権と名誉の問題」だと位置付け、「トルコは主権ある国民国家として、ついに国際的圧力を無視し得る十分な自信をつけた」と主張した。
アヤソフィアは6世紀にビザンツ帝国がギリシャ正教の聖堂として建設したが、1453年にイスタンブールを征服したオスマン帝国のメフメト2世がモスクに改造。世俗主義を国是に掲げたトルコの初代大統領アタチュルクの下で、1935年に「無宗教の博物館」となった。
モスク化の根拠となった10日の判決で、トルコ最高行政裁判所はアヤソフィアは「メフメト2世の個人財産」だとし、彼がモスクとして使用することを認めたと指摘。アタチュルク政権が博物館への変更を決定した34年の閣議決定は無効だと判断した。
エルドアン政権は2016年に起きたクーデター未遂事件の後、司法や報道機関、警察や軍の関係者ら少なくとも16万人を一時拘束し、ほぼ同数が失職したとされる。政権批判を許さぬ雰囲気の下、判決前からモスク化は容認されるとの見方が大勢だった。