【カイロ=佐藤貴生】イスラエルでネタニヤフ首相の辞任を求めるデモが相次いでいる。新型コロナウイルス感染の「第2波」到来を防げなかったとして政権への批判が噴出、収賄罪などに問われながら首相の座を維持している同氏への反感も高まる。約2カ月前に政権発足にこぎつけたばかりのネタニヤフ氏は厳しい状況に直面している。
イスラエル有力紙ハーレツ(電子版)などによると、エルサレムの首相公邸前には25日夜、数千人のデモ隊が集結してネタニヤフ氏に辞任を要求、警官隊が放水などで鎮圧した。今月中旬から始まったデモは公邸前では日常化しており、25日は西部の商都テルアビブでもデモが行われた。
イスラエルは3月、新型コロナの感染拡大が本格化する前に国際航空便の運航制限や外出規制など厳しい対策を取り、5月上旬には1日当たりの感染者を1ケタに抑える成果を上げた。
しかしその後、学校を再開するなど徐々に規制を緩めた結果、感染が拡大。7月下旬には1日当たりの感染者数が2千人を超えて過去最多となった。「必要な対応を取らないままに制限を緩和した」と政府を批判する声が広がっている。
他方、経済活動の制限で失業率は20%を超えた。政権は多くの経済支援策を打ち出したが、国民からは遅すぎると怒りの声も上がる。ネタニヤフ氏の支持率は急落して30%を割った。
ネタニヤフ氏は今月初めから、占領地ヨルダン川西岸地区にあるユダヤ人入植地などの併合に向けた協議を本格化させる方針を示していた。しかし、連立政権内部では「コロナ対策を優先すべきだ」といった意見が噴出。ネタニヤフ氏と緊密な関係にあるトランプ米政権も明確な態度を示しておらず、コロナ感染拡大のなかで併合協議は宙に浮いた格好になっている。
米ジョンズ・ホプキンズ大の集計によると、イスラエルの27日現在の感染者は約6万2千人、死者は470人に達した。