田端信太郎氏、メルカリ社員侮辱で在宅起訴:言論の自由とSNS誹謗中傷の境界線

著名な個人投資家であり会社役員である田端信太郎氏(49)が、フリマアプリ大手メルカリの社員をX(旧ツイッター)上で侮辱したとして、東京地検により侮辱罪で在宅起訴されました。この事件は、SNSでの発言が「言論の自由」の範囲内であるか、それとも「誹謗中傷」に当たるのかという現代社会における重要な問いを投げかけています。特に、影響力のある公人の発言と、その社会的責任について、改めて議論を呼ぶことになりそうです。

東京地検が田端氏を侮辱罪で在宅起訴

東京地検は10月23日、田端信太郎氏が2024年11月から12月頃にかけて、メルカリの女性社員に対し「無能」とXに投稿し公然と侮辱した疑いで、氏を在宅起訴したと発表しました。この女性社員は、今年4月に麻布警察署に告訴状を提出しており、集英社オンラインが9月に書類送検を報じていました。メルカリ側は「全て事実」と認め、今後も従業員保護のため法的措置を含め対応を続けるとしています。

著名投資家・田端信太郎氏。メルカリ社員への侮辱行為で在宅起訴された著名投資家・田端信太郎氏。メルカリ社員への侮辱行為で在宅起訴された

問題視された投稿は、メルカリが公開していた女性社員のインタビュー記事に関連するもので、田端氏は自身のXアカウントで「こういうクソな無能を雇うの、株主からしたら、やめてほしいわ」などとコメントしていました。田端氏を巡っては、メルカリ関連の件以外にも、企業の広報支援会社の代表者ら数人から被害届が提出され、書類送検された事例も報じられています。

田端氏の主張:株主としての意見表明か、誹謗中傷か

集英社オンラインのインタビューに対し、田端氏は侮辱罪の構成要件については「正直ノーマークだった」と認めつつも、自身の投稿はメルカリ株を保有する「アクティビスト個人投資家」としての意見表明であり、決算資料に基づき社員が出すべき成果を出せていないという意味で「無能」と指摘したに過ぎないと主張しました。

田端氏がX(旧ツイッター)に投稿したメルカリ社員に対する「無能」発言のスクリーンショット田端氏がX(旧ツイッター)に投稿したメルカリ社員に対する「無能」発言のスクリーンショット

さらに、これは意見や論評の自由の範囲内であり、「野球選手に『打てねえな。バカ!お前!無能の年俸泥棒!』って観客が言ったら侮辱罪なんですか?」と反論。刑事事件化することに対し「こんなことで訴えていたら、言論を萎縮させることにつながりかねない。株主が自由に物事を訴えられなくなる可能性もある」と懸念を示しました。

侮辱罪の厳罰化と社会的影響力

田端氏はXのフォロワー数約38万人、YouTubeチャンネル登録者数32万人を超えるなど、大きな社会的影響力を持つ人物です。誹謗中傷に詳しい弁護士は、「無能」「バカ」といった言葉は侮辱罪の構成要件に該当する可能性が高く、その社会的影響力の大きさが悪質性の判断に影響すると見ています。SNSでの誹謗中傷対策を背景に、侮辱罪の法定刑は2022年に厳罰化されています。田端氏は「これからも萎縮することなく、投資家や株主の立場から経営に問題提起を続けていく」と発信継続の意向を表明。在宅起訴の報道を受け、自身のYouTubeライブ配信で「起訴状が来るまでコメントはできませんが、報道が事実であるならば、裁判が楽しみです。みなさん傍聴にきてください」と語りました。

今回の在宅起訴は、SNSが日常に深く浸透した現代において、表現の自由と個人の尊厳保護のバランスをどう取るべきか、また公衆の面前での発言がいかに重大な結果を招きうるかという、社会全体で向き合うべき課題を改めて浮き彫りにしています。今後の裁判の行方は、同様の事案に対する社会の規範や法的解釈に大きな影響を与える可能性があります。

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