東大発ベンチャーのイノカ、サンゴの人工抱卵に成功


 東京大学発ベンチャーのイノカ(東京都港区)は27日、都内のオフィスビルで昨年10月から実験を続けてきたサンゴの人工抱卵に成功したと発表した。抱卵とはサンゴの体内に卵がある状態で、産卵の前の段階にあたる。人工の海水環境を再現した水槽の中でのサンゴの抱卵は日本では初めてとみられる。

 イノカは沖縄県久米島周辺の海水を水槽内で忠実に再現。塩分濃度を同じにしたほか、アクアリウム用のライトで紫外線を水槽にあてたり、現地の日照時間に合わせて照明を点灯や消灯するなどの工夫を施した。

 同社は8月以降もサンゴの人工産卵を目標とした実証実験を続け、水温調節を施して産卵時期をコントロールした人工産卵に挑む。サンゴの産卵時期は北半球では6月が最適とされるが、イノカでは3月の産卵を目指す。

 自然界のサンゴは地球温暖化や乱開発の影響で数十年後には絶滅の可能性が指摘されている。地球上の全海洋面積のうち、サンゴ礁が占める面積の割合は世界の0.2%程度だが、そこには海洋生物種の約25%にあたる約9万3千種の生物が生息する。通年でサンゴの人工産卵が実現できれば、海洋生態系の維持が図れる可能性への道が開ける。



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