世界中で自然災害が増加するなど気候変動の危機が進行している。政府は、巨大台風などの大規模災害で停電が発生する頻度が増えているとして、災害時でも電力供給が維持できるよう、法制度や電力会社同士の連携など「電力レジリエンス(強靭性)」を高めていく方針だ。自治体と民間企業が連携し、太陽光発電や蓄電池を整備し、災害時の非常用電源として活用する動きも出ている。
あらゆるモノが通信でつながるモノのインターネット(IoT)、人工知能(AI)、ITと金融が融合した「フィンテック」、電気自動車(EV)…。これらハイテク機器の普及で電力の役割は年々、高まっている。その一方、電力供給に支障が出れば、生活に支障をきたすリスクも大きくなっている。政府は、災害などで通常の電力供給が損なわれた場合でも消費者に電力を安定して届けられるよう電力レジリエンス整備を進めている。
北海道地震で注目
電力レジリエンスが注目されたのは、平成30年9月の北海道地震で、電力供給の半分を担っていた道内最大の苫東厚真(とまとうあつま)火力発電所が損壊して停止。電力の需給バランスが崩れ、他の発電所も次々と止まったことで、道内で最大295万戸が停電し、戦後初の全域停電(ブラックアウト)に陥ったことがきっかけだ。令和元年に関東地方を襲った台風15号で、山間部の鉄塔や電柱が倒れ、発電所から遠い地域で深刻な停電が発生し、おおむね解消するまで2週間以上かかったことも電力レジリエンス議論を加速させた。
深刻な停電の解消策として、鉄塔・電柱の技術基準見直し▽無電柱化推進▽災害に強い小規模送配電網(分散型グリッド)推進▽送配電網の強靱化-などが進められている。
鉄塔・電柱の技術基準の見直しでは、風速40メートルに耐えられるという国の基準を見直し、風が強まりやすい地形や地域で風速の数値を引き上げることにした。損壊が相次いだコンクリート製の電柱は倒木や土砂崩れが原因と判断し、電線の地中化や周囲の木の事前伐採で対応することが決まった。