【北京=三塚聖平】中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)が28日、新型コロナウイルスの流行を受けたオンライン形式での年次総会を開いた。中国の習近平国家主席は開幕式で演説し、開業から4年を超えて「良い立ち上がりを実現した」と強調した。総会に合わせて開いた理事会で現職の金立群(きんりつぐん)氏が次期総裁に再選されたと発表。中国政府の国際的な影響力拡大を支える従来路線が維持される。
習氏は「AIIBが国際的な多国間協力の新たな模範となるべきだ」と述べた。また、新型コロナへの対応について「加盟国が感染症と経済回復に対応するのを支援し、AIIBの行動力を十分に体現した」と評価した。総会は29日まで開かれる。
AIIBは、2016年1月に開業した。加盟国・地域は当初の57から102にまで拡大し、日米が主導するアジア開発銀行(ADB)の68を上回る。アフリカや南米などアジア域外の加盟国も積極的に増やしている。中国は今も25%を超える議決権比率を持ち、事実上の拒否権を握る構図は変わらない。
AIIBによると、これまでに承認した案件は87件で、投資総額は196億ドル(約2兆円)を超える。その中身を見るとADBなどとの協調融資が目立つが、足元では単独融資も増えてきている。
AIIBは、開業した16年から20年までを「立ち上げ段階」と位置付け、基盤固めを重視する戦略をとってきた。21年から27年までを「成長段階」と定め、事業拡大に勢いをつける方針とみられる。ただ、新型コロナ流行後に米中対立が先鋭化する中で、中国政府の影響が色濃いAIIBにも波紋が及ぶ可能性がある。
金氏は中国の財政次官などを経て初代総裁を務めている。AIIBによると総裁選の立候補者は金氏だけだった。総裁の任期は5年で、新たな任期は来年1月16日に始まる。