難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の女性から依頼を受け、薬物を投与して女性を殺害したとして医師2人が逮捕された嘱託殺人事件をめぐり意見を募集したところ、多くの手紙やメールが寄せられた。そのいくつかを紹介しながら、読者のみなさんといっしょに考えていきたい。
寄せられた意見で目立ったのが、ALSをはじめとした難病を患う家族を持つ人からの切実な声だった。
《闘病中は死にたい死にたいって口癖のように言っていました。看てる私もつらくって》(ALS患者の姉を亡くした読者)
《(死を選んだALS患者の女性の選択について)他人がとやかく言うのはやめて》(70代のALS患者の妻)
最愛の家族が病に苦しむ姿を目の当たりにするのは、ときとして当事者以上につらいことなのかもしれない。病に苦しむ家族を、殺害された女性に重ねた悲痛な声は複数届いた。
《夫も発症当初は強い希死念慮(きしねんりょ)(死にたいと願うこと)を持っていた》
こうつづられていたのは、東京都港区の小沢詠美子さん(58)からのメールだ。夫は難病の副腎白質ジストロフィー(ALD)を発症し、7年間の自宅療養を経て、3年前、53歳で亡くなった。夫は亡くなる4年前から、自分の意志で指一本動かすことも話すこともできず、視線が定まらなかったので意思表示する装置も使えなかった。
発症当初こそ夫は「死にたい」と願ったが、《夫の医療・介護チームが夫に愛情を注いでくださったことが、夫を希死念慮から解き放ったのではないかと思います》とし、《週3回の訪問入浴の際に見せる幸せそうな表情が忘れられません》と振り返る。