東芝は31日、東京都内で定時株主総会を開き、「物言う株主」として知られる2つの投資ファンドが推薦した社外取締役の人事案は否決された。一方、車谷暢昭社長の再任をはじめとする会社側の人事案は賛成多数で可決されたが、得票率が伸び悩んだ取締役もいるとみられ、課題を残した。
株主提案をしたのは、いずれもシンガポールを拠点とする筆頭株主の「エフィッシモ・キャピタル・マネージメント」(保有率9・91%)と「3D・オポチュニティー・マスター・ファンド」(同約4%)。エフィッシモは旧村上ファンド系で、今年1月に東芝のグループ会社で発覚した架空取引をめぐり「企業統治の強化が必要」として創業者の今井陽一郎氏ら3人の候補を提案した。3Dは投資家2人の選任を要求したほか、単独事業の価値の合計よりも全体の企業価値が低く評価される「コングロマリット・ディスカウント」が生じ、東芝株が割安になっているとも指摘した。
東芝は、平成27年に発覚した不正会計後の経営再建のため大型増資をした結果、株主に投資ファンドが増加。常に株主対策に悩まされ、今年6月には、約40%を出資する半導体大手キオクシアホールディングスの株売却益の過半を株主還元に充てると発表。架空取引対策で内部監査の担当社員を倍増する方針も打ち出した。
こうした動きもあり、株主総会前には、機関投資家の判断に影響力を持つ米議決権行使助言会社2社が会社側の人事案への賛成を推奨。さらに、エフィッシモが前日の30日に日本の外資規制に対応するため東芝株の5・45%分を売却したと発表し、会社側優勢の流れができた。ただ、株主提案も一定の支持を集めているもようで、さらなる改革の強化が求められそうだ。
(桑原雄尚)