【AFP=時事】新型コロナウイルスの感染抑制策として各国が導入したロックダウン(都市封鎖)を拒み、世界の注目を集めたスウェーデンで今、再び新型ウイルスの感染が拡大している。だが、政府は強制的な抑制策は取らないという方針を貫く構えだ。
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スウェーデンの新規感染者数は、7月と8月は減少したものの、9月中旬以降、再び増加傾向にある。新型ウイルス関連の累計死者は5930人で、人口当たりの死者数は欧州で上位に入っている。
新型ウイルスの感染が再び拡大している現在、欧州の多くの国は、部分的なロックダウンや夜間外出禁止令など厳格な措置を再導入している。しかし、スウェーデンはこれまでの穏やかな対策を、対象を絞って微調整するだけで対応しようとしている。
首都ストックホルムの70キロ北に位置する学園都市ウプサラ(Uppsala)では、今秋に入り大学生が街へ戻ってくると新規感染者数が急増。政府は先週から同市により厳格なガイドラインを導入し、11月3日まで公共交通機関の使用や同居する人以外との接触を避けるよう勧告した。
「人々がそうした厳格なガイドラインに耐えられる期間は限られており、タイミングが重要だ」と、政府の感染症対策を率いる疫学者アンデシュ・テグネル(Anders Tegnell)氏は言う。
ナイトクラブの営業も規制した。さらに4月に出された、70歳以上の高齢者やハイリスク層に対して自衛するよう求める勧告も解除した。対象者が過度に孤立し、うつや孤独といった他の健康問題を引き起こす懸念があったためだ。
しかし、マスクの着用は依然として奨励していない。スウェーデンは、マスクは誤った安心感を与え、ソーシャル・ディスタンシング(対人距離の確保)の取り組みを台無しにする恐れがあると主張する、世界でも数少ない国の一つだ。
ストックホルムでは、ほぼ日常生活が戻ったようにみえる。人々は街に繰り出し、新型ウイルスの流行拡大以降も営業を続けてきたカフェやレストラン、商店などに立ち寄っている。
それでも、スウェーデン市民緊急事態庁の調査によると、国民の80%は助言に従い、行動を変えている。守らなかったとしても罰金や拘束力はないが、市民は在宅勤務をしたり、人付き合いを控えたりしている。
ストックホルムのセーデルマルム(Sodermalm)地区のある住民はAFPに対し、国の方針を信頼していると語った。「強制されなくても、スウェーデン人は(ルールに)従うものだ」
当局は、「短距離走ではなく、マラソン」に対処するというのが、新型ウイルス流行に対するスウェーデンの総合的な戦略だと繰り返し強調している。
スウェーデン公衆衛生局のヨハン・カールソン(Johan Carlson)局長は、「導入された制限を踏まえつつ、ほぼ通常通りの生活を送れるような状況をつくるというのが、われわれの指針だ」と述べた。【翻訳編集】 AFPBB News