【北京=西見由章】29日閉幕した中国共産党の重要会議、第19期中央委員会第5回総会(5中総会)は、2022年秋に2期目の任期満了を迎える習近平党総書記の長期政権化に向けた地ならしが“影の主題”になったもようだ。習氏への権力集中を進める「党主席制」の復活が再び取り沙汰されるなど、水面下の駆け引きが激化している。
【グラフ】米国民の中国に対する評価
5中総会の閉会後に発表されたコミュニケは、新型コロナウイルス感染症の「深刻な衝撃」を受ける中で党中央が「各種の危険と挑戦」に勝利したと主張。「習近平同志が党中央や全党の核心としてかじ取りすれば、われわれは必ず困難に勝利できることが再び証明された」とし、習氏の指導力の必要性を強調した。
習氏の長期政権に向け、さまざまな動きもある。シンガポール紙ストレーツ・タイムズは習指導部が2年後の第20回党大会で党主席制の復活を計画し、5中総会でこの方針を確認するとの見通しを伝えた。新たに党副主席を1~3人置き、現最高指導部の政治局常務委員会は定員を7人から3~5人に減らすという。
17年の前回党大会前にも浮上した党主席制の導入案は、現行の政治局常務委員会による集団指導体制を事実上解体し、党主席に権力を集中させるものだ。●(=登におおざと)小平が1982年に廃止するまで大半の任期を初代党主席の毛沢東が務めており、毛時代への“先祖返り”だとして批判の声は大きい。
習氏の長期政権化をめぐっては、最もハードルの高い党主席制導入だけでなく、慣例を破ることになる党総書記の続投などもすんなりとは決まらない。
89~2002年に党総書記を務めた江沢民氏以降、中国の最高指導者は党トップの「党総書記」と軍トップの「中央軍事委員会主席」、国家元首としての「国家主席」の3つのポストを兼務し、2期10年ごとに指導部の交代を繰り返す体制を原則としてきた。
党関係筋によると、習氏が3ポスト全てを3期目まで続投することには江氏や胡錦濤前国家主席ら党長老の間で異論があり、習氏が国家主席に腹心の李強・上海市党委書記を据えるとの見方も出ているという。