大阪の将来を占う一票をどちらに投じるか。大阪市を廃止し、4つの特別区に再編する大阪都構想の是非を問う2度目の住民投票は11月1日、投開票される。最大の焦点は、市民の生活に直結する「住民サービスは上がるのか、それとも下がるのか」という点だ。推進派と反対派の見解が真っ向から食い違う中、新しい形の統治機構改革はどのような未来につながるのかを予測し、選択するのは難しい。有権者には双方の主張をしっかり吟味して判断することが求められる。
【比較】大阪都構想をめぐる推進派と反対派の主な主張
■拡充か低下か
実現すれば史上初の政令市廃止となる都構想。議論が最も過熱しているのが、「敬老パス(敬老優待乗車証)」や塾代助成など大阪市が現在提供している住民サービスがどうなるか。
都構想の協定書(設計図)は、令和7年元日の特別区設置の際、今のサービスの内容や水準を「維持する」と明記。これを根拠に推進派は「今のサービスは特別区に引き継がれる」と強調する。
ただ、移行から50日以内の選挙で選ばれる特別区長や区議の就任後は、各区での住民サービスの在り方を決めるのは特別区長や区議になる。この点を踏まえ、反対派は「設置時はサービスが維持されても、その後は特別区長の判断。維持される保証はない」と主張。特別区は「政令市の権限と財源を失った脆弱(ぜいじゃく)な自治体」(共産党市議)となり、サービスは維持できないどころか「低下する」としている。
逆にサービスが「拡充する」と主張する推進派の大阪維新の会は、「二重行政の解消で財源が生み出されるため、今より住民サービスはよくなる」と反論。公明党も、予算編成権を持つ4人の特別区長が誕生すれば「より地域のニーズに合ったサービスが提供できる」と訴えている。
■二重行政解消は
都構想の最大の目的は、府市の二重行政を解消することだとされる。
維新代表代行の吉村洋文・大阪府知事は、府市一体の行政運営を行っている今は「人間関係による奇跡的な状態」だと強調。首長が代われば、かつてのように府市が再び対立する可能性があるとして「都構想で制度的に二重行政を解消すべきだ」としている。
一方、反対派の自民党は「二重行政はすでにほとんど解消し、大阪市を廃止する必要はない」との立場。むしろ都構想が実現すれば介護保険事業などは一部事務組合が担うことになり、結果として「府、特別区、一部事務組合の多重行政になる」と指摘し、懸念を示している。
■財政どうなる
特別区移行にかかるコストも争点。協定書は、庁舎整備費など約241億円の初期コストと、新システム運用費として毎年度約30億円の支出増になる、としている。推進派は、移行後も大阪市役所など既存庁舎を活用するため「コストは抑えられた」とする。
だが、自民は「将来的に特別区長が庁舎を新設する可能性があり、コストはもっと増大する」と主張。さらに、新型コロナウイルス禍による大幅な税収減が見込まれているとして「特別区は赤字に転落する」と推測、強い危機感を示す。
これに対し、維新代表の松井一郎市長は「コロナによる減収分は国が補填(ほてん)する仕組みだ」と重ねて説明し、新型コロナの影響についても「一時的で、約4年後の特別区設置まで続くことは考えにくい」と主張。特別区は黒字で推移すると見込んでおり「特別区設置コストは未来への投資だ」と理解を求めている。