金融庁が3月、給与を受け取る権利を現金で買い取る「給与ファクタリング」の実態はヤミ金だと注意喚起して以降、商品売買を装うなどした新たな現金化商法が増えている。
「借金ではない」と顧客を安心させるのが特徴。審査が緩く手軽に利用できる一方、強引な取り立てや法外な「手数料」に苦しむ人は多く、専門家は「形を変えた高利貸だ」と警鐘を鳴らす。
「風景写真を後払いで購入し、感想をSNSに投稿すれば宣伝費として現金を支給する」と勧誘する現金化業者を利用した大阪府の30代男性は「生活費に困って手を出したが実態はヤミ金だった」と後悔の念を口にする。
「誰にでも金を貸してくれる」との口コミを見て、業者のサイトから現金の融通を申し込んだ。「借金ではないなら安全だろう」。身分証の写真や職場の連絡先などを業者に伝えるとわずか1時間後に2万円が振り込まれたという。
男性には写真購入代金として1カ月後に3万5000円を支払う義務が残った。手にした金額との差額1万5000円が事実上の手数料として業者の懐に入る仕組みとみられる。期日までに支払いができないと、脅迫めいた取り立ての電話が連日、職場などにかかるようになった。
こうした現金化商法は3月、金融庁が給与ファクタリングを「貸金業に該当する」と認定して以降、増加傾向にある。
利息制限法の上限(年率最大20%)を超える「利息」を取れなくなった業者が規制を逃れるため、手口を複雑かつ巧妙化させた新たな現金化商法に乗り出しているとみられる。ネット上では、FX自動売買ソフトなどの販売や、領収書を担保にして資金を融通するとうたって、実質的な貸し付けをする業者が50社以上、確認されている。
ヤミ金問題を扱うウイズユー司法書士事務所(大阪)には3月以降、強引な取り立てや返済をめぐるトラブルなど現金化商法に関する相談が増加している。「借金ではないと安心してしまう利用者が多い」といい、奥野正智代表は「給与ファクタリング業者がくら替えして生まれた手口。支払う利息がどれほど膨大なのか事前に調べてほしい」と呼び掛けている。