安倍晋三元首相が2022年に奈良市で演説中に撃たれ死亡した事件。殺人罪などに問われている山上徹也被告(45)の公判が、奈良地裁で行われている。11月13日に開かれた第7回公判からは弁護側の証人尋問が行われており、被告人の犯行動機の解明に向け関心を集めている。
【写真】硬い表情で写真に映る、中学時代の山上徹也被告。当時の“あだ名”も。他、安倍元首相の墓前で手をあわせる昭恵さんの姿
山上被告は逮捕後の取り調べで「母親が旧統一教会にのめりこみ、多額の借金をして家庭が崩壊した」「教団とつながりがあると思った安倍氏を狙った」と供述していたとされる。11月18日以降の公判では、弁護側の証人として山上徹也被告の妹・Aさんが出廷。被告人の家庭環境について、涙ながらに主張したのだった——。【前後編の前編】
母の信仰活動に「気持ち悪いな」
「人に生い立ちを話したことはほとんどなかった。つらい思い出をなるべく忘れようと思って生きてきました。思い出そうとすると、そのときの腹が立ったとか死にたくなったとかいう感情が溢れてきてしまう。それでも、話をさせていただこうと思います」
姿が見えないように衝立を置いて、証言台に立ったAさん。11月13日の公判で行なわれた弁護人の証拠調べでは、山上被告とAさんとの事件前のメールのやり取りも公開されていた。公判を傍聴したジャーナリストで作家の鈴木エイト氏が語る。
「妹のAさんは統一教会への信仰はなく、母による金の無心などについて山上被告と不満を共有するようなやり取りもありました。山上被告は高校卒業まで、母や妹が住む自宅で家族と一緒に過ごしていた。
山上被告の鑑定留置中、接見は弁護人とこのAさんのみに認められていたといい、信頼関係や精神的な繋がりは強いとみられる。被告人の”理解者”として当時の家庭状況や被告人の心境をどのように証言・代弁するのか、注目されていた」
弁護士からの問いに、冒頭のように答えたAさん。母の信仰状況について、次のように証言した。
「(生活していたのは)母と同じ2階の部屋でした。(1998年に母が入信して以降)教祖の写真や多宝塔を飾ったり、お祈りのようなことをしていました。統一教会の紙を見ながら、日本は韓国に戦争でひどいことをしてしまい、申し訳ありませんでしたと写経のように書いていました」
「母が(教会に)私を連れて行くことはほとんどなかったが、パフェを食べに行こうと誘われ、嬉ししくてついていったら統一教会のイベントだった。裏切られた気持ちだった。統一教会の偉い人が講演していたり、お互いの身体を叩き合っていたけど、会場に入りたくなくて、ロビーで待っていた」
そして、母の信仰について「受け入れることはできなかった。気持ち悪いなと」と明かしたのだった。






