北海道旭川市で初となる新型コロナウイルスによるクラスター(感染集団)の発生が発表された今月3日、無関係の市内の居酒屋が“発生源”だとインターネットで広められ、窮地に陥った。一方、実際に発生した飲食店は他店に迷惑がかかると考え、自ら公表した。行政が店名などを伏せて発表するなか、道民には冷静な対応が求められている。
同市の繁華街「3・6街」で居酒屋を経営する50歳代の男性は3日、常連客から電話で「タクシー運転手からクラスターが発生したと聞いた」「ネットの掲示板にクラスター発生の店と書き込まれていた」と知らされて驚いた。心当たりがなく、市保健所で無関係だと確認。SNSで関係ないとアピールし、常連客らがその情報を拡散した。誤った書き込みは削除された。
男性は、臨時休業とクラスター発表のタイミングがたまたま一致したために誤解されたと考えている。「もっとうわさが広まっていたら店がなくなっていたかもしれない。不安はわかるが、一人ひとりが落ち着いて行動してほしい」と話した。
このクラスターの感染者6人が飲食した同市の焼き肉店を経営する男性(32)は4日、SNSで店名を明かして陳謝し、クラスターが確認された経緯や休業などの対応を報告した。店の従業員らの陰性が確認され、「正しい情報が公開されないと、お客様や他の店に迷惑がかかる」と思ったからだ。
店への誹謗(ひぼう)中傷はなく、店は21日に営業を再開する予定だ。男性は「あすは我が身だと思って感染対策を講じてきたが、こうなってしまった。できうる感染対策を全てやり、お客様の安全第一でウイルスと闘っていきたい」と話した。(林麟太郎)