文在寅(ムン・ジェイン)大統領、兪明希(ユ・ミョンヒ)通商交渉本部長 [青瓦台写真記者団]
東アジア地域包括的経済連携(RCEP)に韓国政府が15日に署名したことを受け、中小企業界もこれによる効果の予測に関心を向けている。RCEP加盟15カ国の国内総生産(GDP)を合わせれば26兆3000億ドル(昨年基準)と、世界全体の30%にのぼる。RCEPでこの市場が一つになれば、輸出が増える可能性と同時に、国内市場が脅かされる可能性も高まる。
政府は繊維・機械部品など中小企業の主力品目についても、東南アジア諸国連合(ASEAN=ブルネイ・カンボジア・インドネシア・ラオス・マレーシア・ミャンマー・フィリピン・シンガポール・タイ・ベトナム)が追加で市場を開放する点を前向きに見ている。同じ製品でもどの国での生産工程比率が高いのかによって各国の「Made in 〇〇〇」に対する評価が異なり、関税など通関手続きに一貫性がなかったが、この原産地基準もRCEP内では統一され、こうした不便な点も消えるというのが政府の説明だ。
このほか現在は指定された機関で発給された文書でのみ原産地証明が可能な手続きが自律証明方式に簡素化される点も、韓国の中小企業には好材料になると政府は予想している。中小ベンチャー企業部のノ・ヨンソク・グローバル成長政策官は「RCEPを通じてグローバル通商の不確実性が緩和され、域内の自由化が向上するため、対外依存度が高い韓国経済に大きなプラスになると期待する」とし「特にこの機会に、市場がさらに開放されたASEAN市場に競争力がある韓国中小企業が円滑に進出できるよう積極的に支援する」と述べた。
中小企業界の利益を代弁する中小企業中央会はひとまず歓迎の声明を出した。中小企業中央会は「新型コロナのパンデミック(世界的大流行)にもかかわらず、今後、域内貿易を活性化するきっかけが生じたことを歓迎する」とし「世界主要国が保護貿易・自国優先主義を標ぼうしている時期に、アジアとオセアニアの主要国が自由貿易拡大の意志を表明したのは大きな意味があり、域内国家間の貿易が拡大する新しい機会になると期待する」と明らかにした。
特にRCEP協定文に中小企業支援・保護に関する条項が3枚分もあるという点を中小企業界は評価している。協定文の第14章が「SMALL AND MEDIUM ENTERPRISES」だが、「中小企業が経済・技術発展に寄与するということに同意する」「中小企業のために協定関連内容に関する情報の共有を活性化する」など宣言的な内容がほとんどだが、中小企業界は異例の進展として評価する雰囲気だ。中小企業研究院のイ・ドンジュ副院長は「自由貿易の活性化による中小企業界保護措置を要求する名分として使う可能性は高くないようだ」としながらも「中小企業界支援のための名分になるという点で意味のある条項」と評価した。
ただ、危機を迎える韓国市場・産業が出てくるという懸念もある。代表的なのが「素材・部品・装備」産業だ。技術が相対的優位の日本企業は韓国に対する関税障壁が下がって利益が生じる可能性があり、中国は価格競争力を通じた韓国追撃を加速化する可能性があるということだ。延世大のホ・テシク経営学部教授は「日本はその間、沈滞期を迎え、素材・部品・装備の細部産業別の生存企業がさらに技術を高めた状態」とし「中国の追撃ペースが速くなるだけに、先導的に東南アジアを機会にする戦略・支援が必要と考えられる」と述べた。
このほかRCEP参加国が韓国中小企業市場に対する開放圧力レベルを高めるという見方もある。代表的なのが中小企業保護のため現在のところ大企業が進出できない中古車市場だ。イ・ドンジュ副院長は「国内の大企業が進出を望む市場は海外企業も同じく狙っているとみるべき」とし「中小企業の特恵撤回に対する国際的な要求の動きに韓国政府と中小企業が先制的に対応する必要がある」と提言した。