【北京=田川理恵】中国で、抗日戦争をテーマにしたドラマが「史実からかけ離れている」と批判を受けた末に放送中止に追い込まれた。中国当局が抗日ドラマの「過度の娯楽化」を問題視していることが背景にあるとみられる。
問題となったのは、共産党の八路軍の若い兵士らが日本兵と戦う姿を描いた「雷霆(らいてい)の将官」で、中国の地方局やインターネット上で3日に放送が始まった。
ネット上では、戦時中にもかかわらず兵士らの髪形が整髪料で整えられていることや、八路軍が豪華な別荘に寝泊まりしていることに疑問の声が上がった。15日には中国共産党機関紙・人民日報(電子版)が「歴史に対して浮ついたいいかげんな気持ちではなく、思いやりと敬意を持って臨むべきだ」と批判した。香港紙・明報(電子版)によると、地方局は16日に放送を中止したといい、現在はネット上からも削除されている。
抗日ドラマは一時、武術の達人が日本兵を手で二つに切り裂くなど現実離れした作品が多数、作られた。中国当局は今年7月、「常識や道理に背き、歴史を面白おかしく解釈した」作品を放送しないよう通知を出していた。