英アストラゼネカのワクチン、有効性90%にも 深刻な副作用なし


英アストラゼネカのワクチン、有効性90%にも 深刻な副作用なし

また、年内に最大2億回分のワクチンを製造すると表明。競合の米ファイザーは年内に5000万回分の製造を目指すとしており、アストラゼネカの目標はその4倍に相当する。来年3月末までには世界で7億回分のワクチン供給を目指す。

英国とブラジルで実施している後期治験データによると、まず半分の量を投与し、少なくとも1カ月の間隔を置いて全量投与した場合の有効率が90%だった。

また、少なくとも1カ月の間隔を置いて計画通りに全量を2回投与した場合の有効率は62%。2種類の投与方式を合わせた分析では平均70%だった。いずれの結果も統計的に有意だとしている。

アストラゼネカのワクチン開発関係者は、1回目に半分の量を投与したのは「セレンディピティー(偶然の幸運)」だったと指摘。4月末ごろに英国内の治験参加者に投与した際、疲労感や頭痛、腕の痛みなどの副作用が予想よりも軽度だったことに気付き、調べたところ投与量が計画の半分だったことが分かったが、そのまま治験を継続し、予定された間隔をおいた後に全量を投与したという。

ワクチンの安全性について深刻な事象は確認されなかったとしている。

アストラゼネカのパスカル・ソリオ最高経営責任者(CEO)は声明で「このワクチンの効果と安全性は、COVID-19に対し高い効果があり、現下の公衆衛生の緊急事態にただちに影響を及ぼすであろうことを確認するものである」と述べた。

ジョンソン英首相は「信じられないほど心躍るニュースだ」と指摘。議会で「新型コロナからの解放に向け、ワクチンがかつてないほど近づいており、パンデミック(世界的大流行)に終わりがないわけではないことを強調している」と評価した。

アストラゼネカは今後、各国の医薬品当局に治験データを提出する準備に入る。また世界保健機関(WHO)の緊急使用医薬品指定も目指す。これと並行して中間データの完全な分析を、査読を行う医学誌に送る。

新型コロナワクチンを巡っては、米モデルナが今月16日に、後期治験で94.5%の予防効果が確認されたと発表。その1週間前には米ファイザーが、独ビオンテックと共同開発しているワクチンの有効率が95%だと発表し、すでに米食品医薬品局(FDA)に緊急使用許可を申請した。

アストラゼネカのワクチンは、従来型のウイルスベクターワクチンで、ヒトに対して病原性のない、または弱毒性のウイルスベクター(運び手)に抗原たんぱく質の遺伝子を組み込んだ組み換えウイルスを投与するもの。これに対し、ファイザーやモデルナのワクチンにはメッセンジャーRNA(mRNA)という新技術が用いられている。

ワクチン1本分の価格はわずか数ドル程度と、ファイザーやモデルナのワクチンと比べて格安。さらに2─8度での管理が可能で、保存や輸送が容易だという。ファイザーのワクチンはマイナス70度以下の超低温で保存する必要がある。モデルナのワクチンは2─8度で30日間保存できる。

英国のハンコック保健相は「ワクチンの配布プログラムの大部分が1月、2月、3月に行われる予定で、イースター(復活祭)以降、状況が正常に戻り始めるよう願っている」と述べた。

オックスフォード大学ジェンナー研究所のエイドリアン・ヒル所長は、12月からの英国内でのワクチン展開に向け順調に進んでおり、感染リスクの高いグループに優先的に配布した後、来春には全ての人に行き渡るとした。

アストラゼネカの幹部は、英国には年末までに2000万回分、来年3月末までに7000万回分のワクチンが供給されると述べた。

インペリアル・カレッジ・ロンドンのダニー・アルトマン教授(免疫学)は、後期治験の断片的なデータを比較すると、アストラゼネカ、ファイザー、モデルナのワクチン効果に大した差はなく、1年後には3つのワクチンを全て使用し、約90%の予防効果が得られるようになるのではないかと話した。

*内容を追加しました。



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