米国のトランプ前大統領が半導体製品に対し、最大100%の「爆弾関税」を課す可能性を示唆したことで、韓国政府および関連企業に再び大きな緊張が走っています。情報技術協定(ITA)に基づき、現在、韓米を含む協定加盟国間では半導体製品が無関税で取引されていますが、この提案が実現すれば、自動車や鉄鋼・アルミニウム製品に課されている関税率をはるかに上回る水準が適用されることになります。業界内では、米国が国内半導体産業を誘致するため、従来の国際分業システムを担ってきた国々に対し圧力をかけているとの見方が強まっています。
トランプ前大統領の「100%関税」発言の意図
トランプ前大統領は6日(現地時間)、ホワイトハウスで行われたアップルの対米設備投資計画発表イベントの場で、「半導体とチップに対して約100%の関税を課す予定」であると明言しました。さらに、「米国内で製造しているか、確実に米国内での生産を約束した企業には適用しない」と補足し、米国での生産を強く促す姿勢を示しました。「工場を建てると言っておきながら実際には建てなかった場合は、その時に追加関税を課す」とも付け加え、具体的な国内生産の約束を重視する意図を明らかにしました。トランプ氏はこれまでも半導体関税の可能性に言及してきましたが、具体的な関税率を公表したのはこれが初めてです。この発言は、アップルが今後4年間で米国に1000億ドルを追加投資すると発表した直後に行われました。
韓国経済への影響:自動車に次ぐ重要品目
半導体は、韓国の対米輸出品目の中で自動車に次いで2番目に規模が大きい重要品目です。韓国貿易協会によると、2023年の韓国から米国への半導体輸出額は107億ドルに達しています。韓国政府はこれまで、米国との貿易交渉において、半導体や医薬品については品目別関税で最恵国待遇(MFN)の約束を取り付けたと説明していました。米国が既に欧州連合(EU)と半導体に対して15%の品目関税のみを課すことで合意しているため、韓国にも同様に15%が適用される可能性が指摘されています。半導体の関税政策については、来週に正式に発表される見通しです。
半導体サプライチェーン国内化戦略の一環としての「ムチ」
業界では、トランプ前大統領による今回の関税圧力は、半導体サプライチェーンの国内回帰を促すための戦略的な布石であると解釈されています。現在の世界の半導体サプライチェーンは、米国企業が高付加価値の設計を担い、韓国や台湾といった東アジア諸国が製造・生産を担うという国際的な分業構造を形成しています。前任のバイデン政権が、米国内の半導体製造能力を高めるために巨額の補助金という「ニンジン」を提示したのに対し、トランプ政権は今回、関税という「ムチ」をちらつかせている構図です。
韓国企業が直面する課題と政府の対応
米国の半導体関税が韓国企業に及ぼす影響は決して小さくありません。半導体は自動車に次ぐ対米輸出額第2位の品目であり、2023年に国内生産された半導体全体のうち、米国に直接輸出された割合は7.5%(中国、香港、台湾、ベトナムに次ぐ5位)と絶対的な割合は高くはないものの、その影響は広範囲に及びます。関税が課されれば、対米直接輸出品の価格が即座に上昇するだけでなく、韓国製の半導体を加工して米国へ輸出している主要国の企業が、関税負担を理由に韓国企業へ価格引き下げを要求してくる可能性も排除できません。企業側からすれば、関税を回避するために、投資から稼動まで数年を要する米国現地での半導体工場建設を真剣に検討せざるを得なくなります。現在、アップル以外にも複数の半導体メーカーが米国での生産拡大を約束しており、台湾のTSMCは1650億ドル規模の米国内投資を、NVIDIAは今後4年間で人工知能(AI)インフラに5000億ドルを支出する計画です。
韓国政府は、米国との間で合意した最恵国待遇(MFN)に期待を寄せています。韓米関税交渉で、半導体や医薬品などの品目別関税において他国に比べて「不利でない待遇」を受けることで合意した経緯から、EUに提示された15%という関税率を超えることはないと予測しています。韓国産業通商資源部のヨ・ハング通商交渉本部長は、「最恵国の半導体の関税率が15%に決まれば、韓国にも15%が適用されるだろう」「今後(半導体の品目別関税が)100%になろうが200%になろうが関係ない」と述べました。しかし、トランプ前大統領の即興的な意思決定の傾向から、依然として不確実性が高いとの懸念も強く、政府関係者は「具体的に何をどうするつもりなのかは、今後公開される行政命令を見なければならない」と慎重な姿勢を示しています。
「爆弾関税」実現への懐疑的な見方
業界の一部には、半導体に対する「爆弾関税」が現実のものとなる可能性は低いとの見方もあります。半導体はスマートフォン、自動車、電子製品などに不可欠な「産業のコメ」であり、AI事業に注力する米国の巨大技術企業(ビッグテック)が最大の消費者であることから、高率の関税は米国経済にとって直接の負担となる可能性が高いからです。また、微細な部品である半導体は、製造、設計、パッケージングなど様々な複雑な工程を経て最終商品として完成するため、一律に関税が課されても全体への打撃はそれほどでもないとの見解も示されています。例えば、SKハイニックスが国内で生産した高帯域幅メモリー(HBM)は、台湾のTSMCが製造するNVIDIAのAI加速器パッケージに組み込まれ、メキシコのデータセンターサーバーメーカーでの加工を経て最終的に米国へ輸出されるという、多段階で複雑な分業工程を経ています。
産業研究院のキム・ヤンペン専門研究員は、「米国のメモリー半導体企業であるマイクロンも米国現地の工場ではチップを生産していないため、半導体関税で韓国のみが競争力を失ったり不利な状況になったりするわけではない」としつつも、「対米輸出企業が関税の負担を転嫁し、韓国の部品メーカーなどに価格引き下げを要求する、あるいは市場全体が萎縮するなどの影響は生じうる」との見通しを示しています。
結論
トランプ前大統領による半導体への高関税示唆は、韓国の半導体産業と経済に新たな不確実性をもたらしています。米国のサプライチェーン国内化戦略の一環としての圧力と見られますが、その実現可能性と具体的な影響については、国際的な半導体サプライチェーンの複雑性や米国経済への波及を考慮すると、様々な見方が存在します。韓国政府は最恵国待遇に期待を寄せていますが、今後の米国の正式発表と、国際情勢の動向を注視する必要があるでしょう。
Source link
お問い合わせ japan@hani.co.kr