アメリカのトランプ大統領は、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)について話さなくなった。感染第3波に見舞われ、新規感染者数や入院患者数が増え続けているにもかかわらず、だ。
【全画像をみる】当局は死亡者数30万人超を警戒も… トランプ大統領、新型コロナウイルスについてほとんど語らなくなる
アメリカ大統領選挙でジョー・バイデン氏が勝利を宣言して以来、トランプ大統領は公式声明を”選挙が盗まれた”とする自身の根拠のない主張を強調するために使っている。
トランプ大統領のここ1週間ほどの記者会見とツイートは、ほとんど新型コロナウイルスに言及していない。言及したとしても、それは自身の政権下でワクチン開発が進んだと宣伝するためだ。
米疾病予防管理センターは11月25日(現地時間)、アメリカの新型コロナウイルスによる死亡者数が12月19日までに30万人を超える可能性があるとの見方を示した。
アメリカでは新型コロナウイルスによる死亡者数がクリスマスまでに30万人を超える可能性があると、疾病予防管理センター(CDC)が警鐘を鳴らしているにもかかわらず、トランプ大統領は新型コロナウイルスのパンデミックについてほとんど話さなくなった。
パンデミックが始まって以来、トランプ大統領はしばしば中国を非難し、ワクチンを見つけたホワイトハウスの仕事ぶりを称賛し、ウイルスがアメリカ人に突き付けた脅威を軽視してきた。
そして、ここ1週間ほどはこのトピック自体がトランプ大統領の公式声明から消えてしまったようだ。
アメリカ大統領選挙でジョー・バイデン氏が勝利を宣言して以来、トランプ大統領は公式声明(記者会見やツイート)を”自身が2期目を務める”、”自身への票が盗まれた”とする根拠のない主張を強調するために使っている。
「この選挙は不正に仕組まれたものだが、我々が勝つだろう!」と大統領はツイートした。
トランプ大統領がウイルスに言及しない中、アメリカでは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が猛威を振るっていて、専門家はホリデーシーズンの旅行や集まりが死亡者数をさらに増加させるだろうと恐れている。
アメリカは現在、感染第3波(恐らく、これまでで最悪の大流行)に苦しんでいる。
CDCは11月25日、アメリカの新型コロナウイルスによる死亡者数が12月19日までに30万人を超える可能性があるとの見方を示した。ジョンズ・ホプキンス大学のデータによると、アメリカではこれまでに26万2000人が死亡している。これは世界最多だ。
11月24日には2216人が死亡し、6月26日以来最多となったとニューヨーク・タイムズが報じ、死亡者数が増加傾向にあることから、すぐにこれまでで最も多かった4月15日の2752人を上回るだろうと指摘した。
トランプ大統領はここ数週間、ほとんど公式声明を出しておらず、出したとしてもウイルスにはほとんど言及していない。
11月24日には、ホワイトハウスのローズガーデンで行われた感謝祭の七面鳥に”恩赦”を与える式典に出席し、報道陣を前に挨拶をしたが、 大統領はダウ平均株価の上昇を称賛することから始まり、パンデミックについてはほとんど触れず、「中国のウイルスと戦う」アメリカ人に感謝するのみだった。
式典の前には、類を見ない”1分間”の記者会見を行い、大統領はここでも株式市場を称賛し、「ワクチン開発の最前線で起きていることに興奮した」と語っていた。
翌25日には、共和党支部の聴聞会に電話で参加し、今回の大統領選を「不名誉」とし、すでに死んだ人間が投票していたとする、すでに誤りだと証明されている陰謀論を持ち出した。同じ日、バイデン氏は感謝祭前日のスピーチで人々に団結を呼びかけ、「わたしたちが戦っている相手は、お互いではなくウイルスだ」と語った。
トランプ大統領のツイート(しばしばその本心が垣間見える)も、ほとんどウイルスには言及していない。
言及したのは、ワクチン開発やその生産における自身の政権が果たした役割に関してだ。
11月13日には、ワクチンの早期実用化のためにホワイトハウスのチームが進める「ワープ・スピード作戦」を称賛し、大統領はこの作戦が「90%を超える予防効果がある」とするファイザーのワクチン開発を手助けした功績が認められるべきだと述べた。
Business Insiderのこれまでの報道でも指摘したように、トランプ大統領は大統領選での自身の敗北が濃厚となって以来、公務を疎かにしている。
[原文:Trump has more or less stopped talking about the pandemic, as the CDC predicts the US could hit 300,000 deaths before Christmas]
(翻訳、編集:山口佳美)