【ワシントン=住井亨介】新型コロナウイルスによる被害が世界最悪の米国で、米ファイザーなどが開発したワクチンの緊急使用が許可される見通しとなった。米食品医薬品局(FDA)の許可が出た場合、早ければ24時間以内に、米中西部ミシガン州のファイザー工場からワクチンが出荷される。超低温での管理が求められるワクチンを、いかに速やかに配布できるかが次の焦点だ。
【表】グーグルがAI予測した「危ない自治体」
米国では、医療関係者や高齢者施設の入所者らが優先接種の対象とされている。一般国民の接種については、アザー厚生長官が「来年2~3月になる」との見通しを示している。
ファイザーなどのワクチンは、遺伝情報を伝える「メッセンジャーRNA(mRNA)」という物質を投与する新しいタイプだ。開発期間を短縮できるという利点の一方、mRNAは温度変化に弱く、分解されやすいという短所がある。マイナス70度以下の超低温で保存する必要があり、管理が難しい。
保管できる期間は超低温で最長6カ月間、病院で一般的に使われる2~8度の冷蔵庫では5日間とされている。
米国では、各州の知事が立案する計画に従ってワクチン投与が行われる。東部ニューヨーク州のクオモ知事は9日の記者会見で、17万回分(8万5千人分)のワクチンが週末にも到着するとの見通しを示し、保冷装置を備えた州内90カ所の拠点を経由して医療施設に配送する計画を明らかにした。
ワクチン配送を担う輸送大手も準備に余念がない。米メディアによると、UPS社は不足の心配されていたドライアイスを1時間あたり540キロ生産できる施設を整備。フェデックス社も保有する配送施設や車両、航空機を存分に活用して輸送を行うとしている。
東部メリーランド州など、州兵を動員して配送に当たらせる州もあるが、AP通信によると、軍は基本的に配送業務には関与しない。民間業者では行き届かない地域への配送を担うという。