脱原発政策で稼働が停止した古里(コリ)1号機 [中央フォト]
韓国政府が脱原発政策を固める電力需給基本計画を押し進めることにした。コストが安い上に炭素排出もない原子力発電を維持すべきという声は排除された。
15日の関係官庁によると、産業通商資源部は最近電力取引所ホームページに第9次電力需給基本計画策定に向けた公聴会を24日に開催すると公告だった。政府が公告を通じて出した計画の主要内容は5月にワーキンググループが発表した草案と大きな枠組みでは似ている。原発と石炭は減らし再生可能エネルギーと液化天然ガス(LNG)は増やすのが核心だ。今回の計画は2034年まで適用する。
原発は政府の「脱原発ロードマップ」にともなう新規建設と寿命延長禁止原則により今年の24基から2024年に26基でピークとなった後、2034年には17基に減る。原発設備容量も今年の23.3ギガワットから2034年には19.4ギガワットに縮小される。工事が再開されなければ2月初めに発電事業許可が取り消される危機にある新ハンウル3・4号機は計画上電力供給源から除外された。石炭発電は2034年までに稼動年限の30年となる30基を廃止する。これに伴い、石炭発電の設備容量は今年の35.8ギガワットから2034年には29ギガワットに減少する。
原発と石炭の空いた席はLNGと太陽光、風力など再生可能エネルギーが埋める。廃棄する石炭発電設備中24基はLNG発電に回す。LNG発電の設備容量は今年の41.3ギガワットから2034年に59.1ギガワットに増え、同じ期間に新再生設備容量は20.1ギガワットから77.8ギガワットに増加する。計画通りに実行する場合、韓国の電力生産の主力原料が変わる。今年はLNG、石炭、原発、新再生の順だ。2034年には新再生、LNG、石炭、原発の順に変わる。
2034年の最大電力需要は102.5ギガワットと予想した。最大電力需要が年平均1%ずつ増加するという見通しに従ったものだ。ワーキンググループの草案と比較すると2034年の最大電力需要予想値は1.7ギガワット減った。新型コロナウイルスの余波で厳しくなった経済状況を反映した。
専門家らはこの計画の実現可能性に対し疑問を提起している。再生可能エネルギーを大きく増やすという方針だが、すでに太陽光などを増やしコストなどさまざまな問題が現れているためだ。その上コストが最も安い原発を購入単価が高く全量輸入しなければならないLNGと太陽光などに変えるのにともなう電気料金上昇の可能性と電力需給不安問題を指摘する声が多い。昨年韓国電力の1キロワット時当たりの発電源別購入単価は原発が58.4ウォンで最も安い。再生可能エネルギーは93.73ウォン、LNGは119.13ウォンだ。
韓国経済研究院は昨年12月に「脱原発政策の経済的影響」と題する報告書で、2017年と比べて2030年までに電気料金が25.8%上がるだろうと分析した。今回の計画を反映すれば引き上げ幅はもっと大きくなる可能性が多い。崇実(スンシル)大学経済学科のオン・ギウン教授は「コストは多くかかり生産効率が落ちる太陽光を無理に増やしすでにさまざまな副作用が現れている。発電購入単価が最も安い原発をさらに高く海外から全量輸入するLNGや再生可能エネルギーに変えれば当然電気料金が上がるほかなく、需給に支障が生じるのに政府はこれに対する言及がない」と指摘した。
文在寅(ムン・ジェイン)大統領が直接発表した炭素中立ビジョンと相反するという指摘もある。原発は急速に縮小し代わりに化石燃料を燃やし炭素が多く生じるLNG発電を増やすという点からだ。慶熙(キョンヒ)大学原子力工学科のチョン・ボムジン教授は「米国と欧州が炭素中立政策を展開しながら原発を積極的に活用するという方針を明らかにしたのに対して韓国はやみくもに脱原発を押しつけている。原発をなくし炭素中立をするには結局電気料金急騰のような社会的費用が急激に増えるほかない」と話した。