KOSPI(韓国総合株価指数)が3000、1ビットコインが4000万ウォン(約380万円)まで上がり、「歓呼」ほど「心配」も強まっている。新型コロナウイルスの感染拡大で実物経済は冷え込んでいるが、金融市場だけが過熱しているからだ。金融市場と実物経済の乖離に経済政策当局の悩みも深まっている。
通常、株価の上昇は経済成長の指標と見なされる。しかし今回はそのように見なしがたい。政府の莫大な財政と政策金融支援、低金利基調の中、増えた流動性が実物経済ではなく資産市場に流入し、証券市場を過熱させた側面が大きいからだ。韓国銀行(韓銀)によると、昨年10月の市中の通貨量(M2基準)は3150兆5000億ウォンで過去最大だ。前年比で9.7%も多く、増加幅も記録的だ。
一方、実物経済の回復は「KOSPI3000時代」と比較するとかなり弱い。雇用市場は「寒波」が深刻だ。昨年11月まで韓国国内の就業者数は9カ月連続(3-11月)で減少した。これは2009年のグローバル金融危機当時(8カ月連続減少)以来の最長期間。
中小企業や自営業者は生死の岐路に立っている。「韓国信用データ」によると、全国の店舗の売上高は先月第4週(12月21-27日)まで3週連続で今年最低値を更新している。輸出は回復に向かっているものの、新型コロナ以前の水準には回復していない。昨年の輸出は5128億5000万ドル(-5.4%)と、2019年に続いで2年連続で減少した。
企業の景気は二極化が進んでいる。新型コロナ事態で直接・間接的な特需が生じた主要大企業とは違い、約70万の中小企業の大半は厳しい状況を迎えている。中小企業中央会によると、1月の中小企業景気展望指数は65と、前月比で7ポイント、前年同月比で16.3ポイント下落した。中小企業中央会の関係者は「10、11月に瞬間的に回復傾向が表れたが、内需の萎縮、対内外の不確実性で景気見通しが2カ月連続で悪化している」と説明した。
何よりも資産価格のバブル懸念を強めているのは家計の負債だ。昨年9月基準で家計負債は1941兆ウォンにのぼる。国内総生産(GDP)に対する比率は1年間に16.5ポイントも上昇し、101.1%となった。これは世界最高水準だ。国全体が1年間に稼いだ金をすべて合わせても家計の負債の方が多いということだ。
規模も問題だが質が良くない。借りたお金を事業でなく不動産・株式に投入しているからだ。これは高収益を狙う「レバレッジ投資」だが、株価が下落すれば元金損失に利子負担まで二重苦を迎える。成太胤(ソン・テユン)延世大経済学部教授は「株式市場が急変する場合、リスクが高まり、金融機関全体の健全性イシューに広がることも考えられる」とし「負債がどのような形で増えるかに対する管理が必要だ」と助言した。
中小企業や自営業者の負債はすでに危険レベルに達している。企業の負債も国の負担となっている。国際金融協会(IIF)によると、昨年7-9月期基準で韓国のGDPに対する企業負債比率は110.1%と、世界の平均(103%)を上回る。調査対象34カ国のうち8番目に高い。
韓銀は今年「流動性不足企業」が「基本シナリオ」では2.5%、売上が回復しない「悲観的シナリオ」では4.4%になると推定した。金融支援が終了すれば、この比率は各シナリオで5.2%、7%に上がる。主要経済主体の負債問題が今年の韓国経済のネックになるという懸念が出ている背景だ。
政策当局は本格的に警告を始めた。金容範(キム・ヨンボム)企画財政部第1次官は7日のマクロ経済金融会議で「金融市場の安定的な上昇が持続するためには市場参加者の期待に応じる実物経済の回復が伴わなければいけない」とし「危機が残した傷あとは予想より深いかもしれず、回復過程でどのようなリスク要因が浮上するかは予断しがたい」と指摘した。冷え込んだ実物経済が回復し、加熱した金融市場との均衡が取れてこそ、リスクを減らすことができるということだ。
これは5日の「危機対応過程で増えた流動性が資産市場に流入したり、負債の急増などを引き起こす可能性に留意しなければいけない」(洪楠基副首相兼企画財政部長官)という発言よりも程度が強い。また金次官は「危機対応過程で膨張した流動性が金融部門の安定を阻害しないよう細かく管理し、危機対応措置の軟着陸を講じることが当面の課題」と強調した。
しかし政策当局が手を付けるのは容易でない。資本市場のバブルを抑えようとすれば、副作用がさらに大きくなり得るからだ。限界企業・家計の連鎖倒産が表れ、金融に危機が転移し、再び実物経済にまで衝撃が戻ってくる最悪の状況を迎えることも考えられる。
ソウル大経済学科のキム・ソヨン教授は「流動性供給の速度調節を通じて資産価格の急落、負債の不良化、信用リスクなど副作用を最小化する対策の用意に着手する必要がある」と助言した。