◆株式・マンション上昇で「金持ちになった気分」
国民の暮らし向きは良くなさそうに見える。
韓国銀行によると、昨年7-9月期の消費は1年前より3.3%減となり、貸出は52兆6454億ウォンで統計作成以来最も多かった。それでも高価な名品消費が増えた背景は何か。
マッキンゼー・アンド・カンパニーのキョン・ウソン副パートナーは「興味深い事実は、株式市場の上昇がブランド品消費の増加に影響を及ぼした可能性があるということ」と話した。会社員のイさん(48)の話がこれを裏付ける。「コロナ直後、KOSPI(韓国総合株価指数)が暴落した時、今やれば無条件で勝率100%だからと言われて買った銘柄が2倍になり1億ウォン以上儲けました。一生でこんなに収益を出したのは初めてなので、妻にブランド品バッグをプレゼントして酒もたくさん買いました」
実際、KOSPI指数は昨年3月19日に1457.64ポイントまで暴落し、5月に2000ポイントまで回復し、12月30日2873.47ポイントで終えて、1年間で32.1%も上昇した。
不動産市場もこれに劣らない。昨年有り金すべて集めて6億ウォン台のアパートを用意した会社員のホさん(39)は「生まれてから最高の出来事」と喜んだ。アパートは1年で売買価格が8億ウォンに上昇した。ホさんは「月給から貯金をして1億を集めるのに5年以上かかったが、数カ月で2億を儲けて消費に自信がついた」とし「初めてブランド品の財布・ベルト・書類がばんなどを買った」と話した。ソウル麻浦区(マポグ)阿ヒョン洞(アヒョンドン)のマンション価格が18億~19億まで上がった主婦のシンさん(34)も「金持ちになった気分だ。団地内のオリニチプ(保育園)に行くと、若い母親たちがエルメスやシャネルのバッグを手にやってくる」とした。
◆ブランド品を買う客の事情は「それぞれ」
所得はそのままだが、ブランド品に金を使う「状況」になった人々も少なくない。40代会社員のパク・チウンさんの場合、毎年2回、夏・冬の休暇に合計1000万ウォンほどを使ったが、昨年は国内旅行すら一度もまともに行けなかった。パクさんは「以前は同じお金で旅行かブランド品か選ばなければならなかったが、今は旅行に行けないのでブランド品を買えるようになった」と話した。名品宝石業界関係者は「富裕層が増えたというよりは、他の活動の代わりにブランド品に金を使った人が多いので、企業側もだからといってすぐに物量を増やすことはできない」と慎重な態度を見せた。
ブランド品を単なる「消費」ではなく「投資」対象として見る認識は、経済沈滞の中でブランド品消費の増加を説明するもう一つのカギだ。最初から後で再販売(re-sell)することを考慮し、どうせなら相応の価格を得ることができる品物を買おうというものだ。
梨花(イファ)女子大学経済学科のキム・セワン教授は「今の名品好況は所得が上がらなくても資産価値が上がれば消費が増える『富の効果』に、貨幣価値下落に備えようとする『現物投資心理』が結びついた現象」と解釈した。米国でも1995~2005年まで株式と不動産価格が高騰すると、消費が所得を追い抜く現象が現れた。キム教授は「資産市場の好況は続かないため、負債が多いなら資産価値を所得として誤解することには注意する必要がある」と話した。
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