新型コロナウイルスの流行で外国人労働者の流入が減り農家の働き手需給に支障が生じた。京畿道一山のある農家で外国人労働者が冬に植えたハクサイを刈り取っている。キム・ボムジュン記者
2万1666人vs2437人。昨年韓国の製造企業が現場で必要だとして申し込んだ外国人労働者(非専門就業E-9ビザ)の人数に対する入国者数だ。100人必要なのに11人だけ供給された格好だ。新型コロナウイルス流行の長期化で外国人材に依存してきた韓国の中小製造業者と農畜産業、漁業の人材不足は限界に達した。現場では人件費が上がったのに働く労働者を確保できず人材引き抜きが横行している。
中小企業中央会が8日に明らかにしたところによると、今年韓国政府が企業需要を推定して受け入れることにした外国人労働者は3万7700人だ。このうちすでに韓国で働く労働者が3カ月間の休息後に再入国することにした1万300人を除くと新規人材は2万7400人。だが今年に入り先月末までに入国した新規人材は105人にとどまる。需要の0.3%水準だ。
新型コロナウイルスによる外国人労働力不足は昨年も激しかった。例年であればカンボジア、ベトナム、ネパール、インドネシア、フィリピンなど16カ国から新規で年間3万~4万人ずつ入ってきたが、昨年は2437人だけ入国した。これすらも新型コロナウイルスが流行する前の昨年1~3月に入国した2234人が大部分だ。今年はさらに大きな打撃は避けられない。
本格的な農作業シーズンを控え農村でも厳しい状況になった。国際結婚した移民者などの招請で来た訪問同居人と短期就業ビザ滞在者のつてを頼って働き手を確保していた農家では「農作業はつらくサービス業や製造業より人を確保するのが大変だ」と訴えている。
業界では政府と自治体次元の隔離施設拡充、特別入国防疫対策などを要求している。外国人労働者は入国後14日間の義務隔離を経なくてはならないが、隔離施設不足で入国できない人材も相当数に上るためだ。隔離施設が拡充されるだけで1カ月に800人ずつ入国が可能だが現在は100人しか入国できずにいる。韓国鋳物工業協同組合のソ・ビョンムン理事長は「7月から従業員50人未満の企業にも週52時間労働制が拡大施行される予定で、労働力難がさらに深まりかねない」と話した。
◇外国人労働者80%不足…気をもむ中小企業と農家
法務部によると昨年1~11月の外国人入国者は観光客も含め259万3706人で、前年同期の1638万9768人から84%急減した。特に非専門就業(E9)と訪問就業(H2)ビザを保有する外国人労働者は昨年11月基準で前年同月比93%と88%減った。これに対し合法的な滞在期間が満了したが依然として韓国国内にとどまっている不法滞在者39万2575人は全外国人滞在者の19%まで増えた。産業現場では外国人人材不足で工場が止まり農作業が遅れるという懸念が大きくなっている。業界では「外国人労働者向けの隔離施設拡充などに積極的に取り組み入国者を増やすのがそれなりに現実的な対案」という主張が出ている。
◇「不法滞在者でも雇用しなければならないのか」
中小企業中央会は今月1~18日に中小企業を対象に外国人労働者申請を受け付けている。だが「人材を割り振ってくれるのでもなく何のために申請を受けているのか」という抗議だけあふれている。昨年の場合、中小製造企業界が要求した人材は2万1666人だったが実際に割り当てられる人数は2437人にすぎなかったためだ。
首都圏のある中小企業社長は「生産ラインの稼動を止めながら外国人労働者らの入国を待ったが1年が過ぎた。仕方なく同じ業界でリタイアした60代の労働者を尋ね回って空白を埋めているが、不法滞在者でも使わなければならないかと悩み深い」と話す。首都圏の国家産業団地で勤める労働者のキムさんは「外国人労働者が担当する業務の特性上、若い人材が代替しなくてはならないが韓国人の若者は来ないだけでなく長く勤められない」と話した。代替人材がいないという意味だ。京畿道金浦(キョンギド・キンポ)のある家具メーカー社長は「以前には見られなかったアフリカや中東の難民を現場に活用する業者も出てきている」と打ち明けた。
需要に比べて供給が極めて不足しており企業間競争により外国人労働者の価値が高まっている。慶尚南道(キョンサンナムド)のある零細製造業者は最近外国人労働者3人が一気に別の業者に転職して生産に影響が出ている。この業者の社長は「外国人労働者がまとまってもっと高い給料を払う中小企業を探してショッピングをするように工業団地周辺を回る事例が全国で広がっている」と話した。
◇農村は「人材80~90%不足」
全羅北道(チョンラブクド)で12万坪規模の畑作をしているチョンさんは今年の農作業の先行きが不透明だ。彼は「畑作に80人が必要だがいま動員できる人材は10人にしかならない。外国人労働者の抜けた穴はとても大きい」と話した。昨年初めに6万~7万ウォン水準だった人件費は昨年の農繁期に14万ウォンまで高騰し、農閑期である最近も10万ウォン水準を維持している。それでも人材を確保できない。
忠清南道(チュンチョンナムド)の天安(チョナン)一帯で2000坪規模のビニールハウスでキュウリを作るイさんも4~5人の必要人材のうち2人だけどうにか確保した状態だ。イさんは「農作業は休まずに働かなければならず、週5日勤務も容易ではない。外国人夫婦の月給が30万~40万ウォンずつ上がり2人で合計320万ウォン程度を払っているが、もっと多く払うという所に移らないかと思って心配だ」と話した。全羅南道(チョンラナムド)の新安(シンアン)一帯で長ネギ作りをするイさんは「昨年ボランティア人材と軍部隊などに依存してかろうじて農作業をしたが今年の長ネギ作りはできそうにない」と話した。
◇隔離施設拡充など対策要求
業界では外国人人材流入を増やすために隔離施設を拡充すべきと主張した。忠清南道で外国人労働者を支援する牙山(アサン)移住労働者センターのウ・サムヨル所長は「熟練した外国人労働者が出国後に再入国できるといっても、2週間の隔離期間に使わなければならないホテル滞在費のため韓国に来るのをあきらめるケースも増えた」とした。中小企業と農家の宿舎は共同トイレなどを使うため隔離施設に適合せず、別途の隔離施設を用意しなくてはならないが容易ではないということだ。外国人入国者がホテルなどで隔離する場合、1日の宿泊と食事費に10万ウォンずつ、14日間で約140万ウォンを負担しなければならない。地域のホテルを隔離施設として活用するには各自治体の許可を受けなければならないが、ほとんどの自治体は地域からの苦情を懸念し難色を示している。現在中小企業人材需給などに向け管轄内のホテルを隔離施設として許可したのは釜山市(プサンシ)が唯一だ。
中小企業中央会のソン・ソンウォン外国労働者支援部長は「昨年11月から新型コロナウイルス感染者が少ないカンボジアからだけ人材を受け入れているが、隔離施設不足で1カ月に100人しか入国できずにいる。隔離施設さえ各自治体で認めるならば1週間に200人ずつ毎月800人入国できる」と話した。
長期的な解決策は勤務条件や施設の側面で働きやすい中小企業にすることだ。中小企業研究院のノ・ミンソン未来戦略研究団長は「中小企業の劣悪な勤務環境を改善する革新を通じて生産性も高め、韓国人青年層を流入して外国人労働者に依存してきた人材需給問題を長期的に改善しなければならない」と指摘した。