米国でLGエネルギーソリューションと「バッテリー紛争」を繰り広げているSKイノベーションが、ジョー・バイデン米大統領の介入を要請したとウォールストリートジャーナル(WSJ)が1日(現地時間)、報じた。米国際貿易委員会(ITC)の輸入禁止決定について拒否権の行使を求めている。
ITCは先月10日、営業秘密侵害を理由にSKのバッテリーと部品について、米国への輸入禁止10年を命じた。SKは60日以内に大統領にITCの決定取り下げを要請することができる。
SKイノベーションは文書で、ITCの輸入禁止決定はことしの年末の完工を目標にジョージア州に建設中の電気自動車用バッテリー工場の稼働に否定的な影響を与えるおそれがあると主張した。26億ドル(約2777億円)を投資した工場が稼動開始すれば2600人の雇用が生じるが、それに支障をきたしかねないということだ。
ここで作られたバッテリーは、近隣のフォードとフォルクスワーゲン自動車工場で生産された電気自動車に搭載される。ITCはフォードとフォルクスワーゲンが他の供給業者を探せるように、それぞれ4年、2年間の輸入を許可する猶予措置を下した。
SKのこのような言及は、環境に配慮した産業育成を主要政策基調に掲げたバイデン大統領の最近の歩みを勘案ものと見られる。
バイデン大統領が就任後に発表した気候変動への対応と、脱石油政策、クリーンエネルギー産業の拡大、雇用創出などの主要な政策は、SKとLGのバッテリー紛争にも影響を及ぼす可能性がある。
バイデン大統領は24日、半導体・自動車用電池・レアアース(希土類)・医薬品の4品目のグローバル・サプライチェーン(供給網)の実態を確認し、米国に有利な戦略を構想することを指示する内容の行政命令に署名するなど、米国の製造活性化を政策の優先順位上位に置いた。
先端技術製品の中国依存を低減し、強力な政治勢力として浮上した低学歴の白人男性のための製造業雇用を作るために、米国に工場を建設する企業に税制上の優遇やインセンティブを与える案が議論されている。
SKイノベーションが政権に提出した文書で、2025年までに米国に24億ドルを追加投資し、雇用3400件を更に作ることを約束するなど、既存の報告にはない新たな投資計画を公開したとWSJは伝えた。
LGもバイデン政権の説得戦に乗り出した。WSJはLGの関係者が26日、通商担当官僚に会い、ITCの輸入禁止決定が維持されるべきだと説得したと伝えた。
SKのバッテリーの輸入が禁止される10年間、LGが米国内でのバッテリー生産を増やし、フォードとフォルクスワーゲンまで供給する可能性があるという立場も米政府に伝えたと情報筋を引用して報じた。また、LGはSKから金銭的補償を受けて事案に決着をつける意志もあるという立場を米政府に伝えたという。
現地ではトランプ政権と他のバイデン政権の政策基調がSKに肯定的に作用する可能性もあるが、米国経済の根幹を成す「公正な競争」に関する問題だから、大統領が既存の決定を覆すことは困難だろうという分析も出ている。ITCはSKが証拠を隠滅した点を踏まえ、バッテリーと部品の輸入禁止命令を下し、LGに味方した。
2013年にオバマ大統領は、サムスンとアップルが行った特許侵害訴訟でITCがアップルのiPhoneとiPadの輸入禁止決定を下すと、競争が消える条件と消費者に与える潜在的な被害を理由に拒否権を行使した。
WSJは、SKとLGが米国で争っていることについて丁世均(チョン・セギュン)首相が恥ずかしいという反応を見せたと紹介した。また、フォードのジム・ファーリーCEO(最高経営責任者)が「両社が合意することが、米国の製造業と労働者のための最善の利益」と書いたツイートを紹介した。