アップルのメタバース投資もすさまじい。2015年以降に買収したメタバース企業は10社を超える。アップルが買収したXR企業の事業領域を見ると、ソフトウエア、ハードウエア、カメラ、コンテンツ、光学などXRのあらゆる構成要素を網羅する。企業内部でXR事業の「垂直系列化」が完了したという評価が出ている。
グーグルもやはり2014年にARソフトウエア開発会社のクエストビジュアル買収をはじめ、アイフルーエンス、オウルケミー・ラボ、ノースなどXR企業を相次いで買収した。
◇「フェイスブックのXR人材だけで1万人以上」
ビッグテック企業の投資は買収合併だけにとどまらない。欧州、アジア、中東など地域を分かたずXR開発・企画などの人材を積極的にスカウトしている。韓国も例外でない。この3年間に韓国企業からビッグテック企業に転職したXR人材は最小20人を超える。大学院で研究中である学生まで「青田買い」するほどだ。光学分野で専門性が高いソウル大学のイ・ビョンホ教授研究室だけでこの2~3年で2人の研究員がフェイスブックに転職した。
実感的なXRサービスを実現するにはディスプレー、半導体、AIなどの技術と人材も必要だ。ビッグテック企業がこれら分野でXR開発のためスカウトした事例まで合わせれば流出規模はもっと大きいだろうというのが業界の話だ。
XR業界関係者は「現在フェイスブックのXR人材は1万人以上で、アップルとグーグルも数千人に達するという。積極的な買収合併と人材スカウトの結果」と話した。続けて「韓国は大企業でもXR専門人材は多くて数十人にすぎない」とした。科学技術情報通信部の調査によると、韓国のXR企業の人材は2019年に1社当たり平均10.1人にとどまる。
◇「韓国のXR生態系の強化が至急」
アップル、フェイスブック、グーグルなどは数年間の投資でXR完成品を作るための技術・人材を企業内にすべて備えたと評価される。開発者が良いアイデアさえあればこれを簡単に製品化できる環境だ。これに対し韓国は3次元映像製作、コンテンツ製作など分野別に得意な企業はあるがXR技術全般を内在化した企業はない。さらにビッグテック企業は優秀なXR人材に最低年俸3億ウォン以上を保証するという。人材流出が起きるほかない構造だ。
メタバース業界関係者は「転職は個人の選択であり防ぐのは難しい」としながらも、「優秀人材が韓国で能力を存分に広げられる環境を作らなければならない」と話した。続けて「XRスター企業を育て、ソフトウエア、ハードウエア、ディスプレー、コンテンツなど各分野の企業の有機的協業がなされる生態系作りが至急だ」と強調した。業界共同戦線を構築してビッグテック企業と競争しなければならないという話だ。
韓国科学技術研究院(KIST)のアン・サンチョル責任研究員は「まだ初期段階であるメタバース市場が大きくなるまで企業が倒れないよう政府が柱の役割をする必要がある」とした。続けて「企業間の協業が必要な政府課題を多く作り、XR技術の研究開発支援を強化する必要がある」とした。
韓経:「最低年俸3億ウォン保証」…韓国人材引き抜き「非常事態」(1)