クーパンイーツ・マートの配達バイクがソウル松坡区(ソンパグ)のCoupang(クーパン)マイクロフルフィルメントセンター前で待機している。
ソウル松坡区(ソンパグ)に住むAさんは7日午後10時、「クーパンイーツ・マート」を通じてラーメン・パックご飯・シャンプーなどを注文した。それから6分後に共同玄関のベルが鳴った。その2分後、注文完了メッセージが携帯電話に表示された。普段は家の前のコンビニで買う品物だが、夜遅く外に出る煩わしさを配達費2000ウォン(約192円)と引き換えにした。
韓国の通販大手クーパン(Coupang)の「路地裏ロケット配送」にコンビニ業界が超緊張状態だ。都心の小規模物流センターである「マイクロフルフィルメントセンター(MFC)」でコンビニやスーパーマーケットに代わって物品を配達するクーパンイーツ・マートは今月初めのサービス開始と同時に業界に波乱を起こしている。15分以内に配送という初めての「クイックコマース」という点だけでなく、1000万点の物品調達能力と強大な資金力を確保した「クーパン発路地裏商圏攻勢」という点で、業界が感じる危機感は以前とは次元が違う。
◆クーパンのクイックコマースで衝撃に陥ったコンビニ
今月初め、松坡区(ソンパグ)でクイックコマースを開始したクーパンは、都心内のMFCと専門ライダーを前面に出して本格的な攻勢に乗り出している。「15分以内」の配送時間に合わせるためにライダーを直接雇用してMFCに常駐させている。業界関係者は「注文受付後、ライダーと交渉して配送する方式では15分以内に配送できない」とし「クーパンは初期費用負担とは関係なくライダーを確保してMFCを他の地域に伸ばすものとみられる」と話した。
「配達の民族(ペダレミンジョク)」の「Bマート」、「ヨギヨ」の「ヨマート」がクーパンに先立ち類似のサービスを展開しているが、業界ではクーパンのクイックコマースに格別な脅威を感じている。強大な資金力をテコに、都心の至るところにMFCを設置して超高速配送を前面に出し、コンビニ業の本質である近距離オフラインショッピングと猛スピードで入れ替わりかねないという懸念からだ。SK証券のユ・スンウ研究員は「伝統流通チャネルのうち、eコマースとの競争から比較的自由だったコンビニを別の角度から見ることになった」と分析した。
コンビニ業界はクイックコマースに先立ち、この分野に参入したBマート、ヨマートの出現に反発しながらも大きく心配することはなかった。これら選抜企業はクーパンイーツ・マートとは違って専属ライダーがいないため配送に30~40分かかった。この程度の競争力では配達費まで出すクイックコマースがコンビニに代わるとは思っていなかった。そのうえ純粋なフードデリバリープラットフォームであるペダレミンジョク、ヨギヨは商品ソーシングの経験がなく、物流センターの運営もしたことがないため品揃えもそれほど多くなかった。
コンビニ業界関係者は「Bマートがコンビニ業界の商品企画担当(MD)など人材を多く引き抜いていったが、拡張が思ったよりも遅かった」と話した。反面、クーパンはすでに大規模な直購入とこれを通じたロケット配送を現実化したオンライン流通の絶対強者だ。クーパンが直購入している商品点数だけで1000万点にのぼる。
◆コンビニ業界「反発」不可避
大規模資本力をテコにしたクーパンの速度戦はコンビニ業界にとっては初めての経験だ。クーパン物流センターが大型マートに代わったように、クーパンイーツ・マートのMFCがコンビニ店舗を猛スピードで蚕食しかねないという懸念が出てきている。コンビニはクーパンイーツ・マートの拡大速度に神経を尖らせている。コンビニ業界関係者は「全国にはコンビニが5万軒あるが、クーパンイーツ・マートがこれよりも多くMFCを確保することはできない」としながらも「ソウルなど首都圏では打撃が避けられないのでは」と吐露した。
クーパンのクイックコマース参入を地域商圏侵害論争に広げようとする動きも感知される。便宜店主協議会は昨年9月に発表した声明で、Bマート・ヨマートに対して「これら企業は伝統小売業種の取扱商品を供給していて路地裏商圏の崩壊が必然的」としながら「急速に市場を蚕食しているが何の規制も受けていない」と反発したことがある。クーパンイーツ・マート松坡区(ソンパグ)MFCの半径300メートル以内にはコンビニ9軒、スーパーマーケット6軒が営業中だ。コンビニ業界関係者は「クーパンに対する社会的な反対の雰囲気と重なり、店主の抵抗は相当なものになるだろう」と話した。