大阪ビル放火事件の現場周辺で手を合わせる人たち=2021年12月24日、大阪市北区
大阪市北区の雑居ビルに入るクリニックで25人が犠牲になったビル放火殺人事件で、亡くなった大阪府豊中市の男性(34)は昨年3月まで中学校で教員をしていた。
心身の不調などで離職を余儀なくされ、実家に戻って教壇への復帰を目指していた中、事件に巻き込まれた。
知人らによると、男性は大学卒業後、臨時採用として教員を続けた後、岐阜県の教員採用試験に合格。2020年4月から1年間、公立中で理科を教え、1年生の担任や剣道部の顧問もしていた。
同県で再任用教員を務める60代女性は、教員の集まりで男性と知り合った。「とても優しく、まじめだった。仕事が終わっても生徒の家庭訪問をしたり、電話で話を聞いたりしていた」
男性が大阪に戻る際には、ささやかな送別会を開いた。その後、無料通信アプリ「LINE(ライン)」で、楽しそうにしている写真も送られてきた。「復職に向けて頑張っていたと思うといたたまれない」。女性は昨年12月24日に現場ビルを訪れ、涙を流した。
男性のものとみられるフェイスブックには、教員採用試験に合格したことを報告し、「新天地で頑張ります」と書かれた投稿もあった。7年前から付き合いのある大阪市内のカフェバーの男性店長(38)は「ゆっくり静養し、また教師の仕事に戻ればいいと思っていたのに」と悔やんだ。