「涙を堪えるように黙って俯いて」放置された“虐待”通報~埼玉・本庄市 5歳児死体遺棄~

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「涙を堪えるように黙って俯いて」放置された“虐待”通報~埼玉・本庄市 5歳児死体遺棄~

写真: TBS系(JNN)

現場となった民家は窓に目張りが施され、そこで共同生活をする4人を、近隣住民は「異様な存在」とみていた。
周囲に「私たちは仲の良い友達なの」と話した容疑者らは、警察の取り調べに対し、「3人で穴を掘って遺体を埋めた」と容疑を認めているという。

歩夢くんはなぜ命を落としたのか。関係者への取材を進めると、事件の半年前、歩夢くんの虐待を疑う通報が、市に寄せられていたことがわかった。

■女の子に歩道側を譲る優しい子

歩夢くんは2016年に本庄市で生まれ、翌年4月から市内の保育園に通い始めた。保育士によれば、歩夢くんは誰にでも優しい子だったという。

「お母さんとお父さんと3人で来た入園式を昨日のことのように覚えています。本当に仲の良さそうな家族でした。歩夢くんはとにかく元気で、笑顔を絶やさない優しい子。先生の話を聞くときは、誰よりも真剣な顔をして、質問すると一番に手を上げて答えてくれました」

同級生の保護者も、歩夢くんの優しさが印象に残っているという。

「女の子と道を歩くときは、必ず歩道側を譲ってあげるんです。そんな優しい子供いますか?どこで覚えたのかわからないけど、家庭でも優しく育てられたのでしょう」

当時の一家を知る人は、「どこにでもいる、幸せな家庭にみえた」と口を揃える。しかし、2020年7月に変化が訪れる。知香容疑者が「夫が怒鳴って暴れている」と警察に通報したのだ。
 
保育園によれば、知香容疑者は「私が歩夢を守らなければならない。だから逃げます」と話し、歩夢くんと家を出た。一時、同級生の“ママ友”の家に身を寄せ、半年後には、事件のあった民家に移り住んだ。内縁関係にあった丹羽容疑者と石井容疑者が2人で暮らしていた家だ。
なぜ4人で共同生活を始めることになったのか。その関係性は分かっていない。

■謎につつまれた共同生活「歩夢くんは変わった」

共同生活が始まった2021年1月頃から、歩夢くんは保育園を休みがちになる。知香容疑者は「同居人に持病があるので、コロナ感染が怖い」と園に説明していたが、園が「誰と住んでいるのか、どんな生活環境なのか」と聞いても答えなかったという。

歩夢くんの様子も一変したと保育士は振り返る。

「お母さんと一緒に、丹羽容疑者がお迎えに来たことがあります。いつも歩夢くんは『先生たち!さようなら!』って笑顔で帰っていく。でもその日、歩夢くんは丹羽容疑者のもとに駆けつけていって「遅くなって申し訳ございません」と謝ったんです。明らかにおかしいと思いました」

別の保育士も異変に気づいていた。

「丹羽容疑者と生活を始めて、歩夢くんは変わった。些細なことを注意しただけで固まってしまったり、何もない日に突然《いつも、いじわるしてごめんなさい》という手紙を同級生に配ろうとしたり」
 
そして、保育士たちの不安が確信に変わる出来事が起こる。市内の飲食店で“虐待”が目撃されたのだ。

■放置された“虐待”の通報

「歩夢くんが正座させられて、男から責められているんです。大人たちはご飯を食べているのに、歩夢くんは手をつけることも許されない。1~2時間ずっと、涙を堪えるように黙って俯いてました」
「怒られている歩夢くんに対して、母親がスマホを向けている時もありました。本当に異様な様子で、明らかに虐待でした」

そう語るのは、市内で飲食店を営む店主の男性。店には丹羽容疑者が知香容疑者と歩夢くんを連れ、何度か食事に来ていたという。

「3回来店しましたが、3回とも歩夢くんは怒られていました。店でこの状態だったら、家では・・・。そう考えるだけで恐ろしくて、お会計の際に話しかけました」

店主は歩夢くんを助けたいと機会を窺っていた。丹羽容疑者らに「お子さん、すごくお利口ですね」と声を掛け、会話の中で歩夢くんの名前と年齢、通っている保育園を聞き出した。そして保育園に電話をかけた。

「店主から連絡があって、虐待の不安が確信に変わりました」

店主と保育士は、歩夢くんが、同居している丹羽容疑者から虐待されていると確信を持った。そして、本庄市に通報することにした。“市が動いてくれる”そう信じたという。

「私たち保育士は、歩夢くんに異変を感じても、プライベートまで踏み込めなかった。でも、これで行政に動いてもらえる、歩夢くんを救えると思いました」

しかし、市の回答は「母親からのSOSがなければ動けない。見守ってあげてください」というものだった。

通報から半年後、歩夢くんは民家の床下の冷たい土の中から遺体で発見された。

■「見守って下さい」動かなかった行政

事件発覚後の会見で市の対応を問われた市長は、「保育園からは母子関係は良好と報告を受けていた」と答えた。

通報を受け、市は母親の知香容疑者と保育園で一度面会を実施していたという。
しかし「虐待をしている」と通報で名指しされた丹羽容疑者については、一切接触もしていなかった。

丹羽容疑者と接触しなかった理由については、「丹羽容疑者については“また聞き”のような情報だった」「母親(知香容疑者)も、どこに身を寄せているのか一切言わず、男性(丹羽容疑者)を突き止めてどうこうという状況にはなかったのだと思う」と言葉を濁した。

「見守ってくださいと言われたが、市への通報後、歩夢くんは一度もお店に来なくなってしまった。見守ってあげることすらできなかった」(飲食店 店主)

「園の中では見守りますよ。でも家に帰った後は、私たちでは見守れません。だから何度もお願いしました。丹羽という男の虐待が疑われる、行政で動いてくださいと」(保育園 職員)

市は、歩夢くんを救うために動いたと言えるのだろうか。

厚生労働省によると、児童虐待の相談対応件数は、30年連続で増加し、昨年度には20万件を超えた。今もどこかで、歩夢くんの様に、涙を堪えるように黙って俯いている子供がいるかもしれない。なぜ歩夢くんの命が奪われたのか。その捜査とともに、市の対応も検証しなくてはならない。

TBS報道局社会部
塩田亜多夢
(20日14:00)

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