(写真:読売新聞)
岡山市内で発生した特殊詐欺事件を発端に、岡山県警が全国的な詐欺組織の壊滅へと迫っている。昨年夏頃から幹部を次々と摘発し、先月にはついに組織トップの逮捕に至った。県警は組織のメンバーの大半を逮捕したとみており、「全容解明に向け、今後も捜査を尽くす」としている。(上万俊弥)
発端は2020年3月、岡山市の高齢女性が電話で「あなたの口座から勝手に高額商品が購入された。口座を停止する手続きで必要」などと言われ、だまし取られたキャッシュカードから100万円を引き出された。通報を受けた県警は、カードを受け取った「受け子」役の広島市の少年を詐欺容疑で逮捕。この少年から組織上層部への「突き上げ捜査」を開始した。
組織末端の受け子や金を引き出す「出し子」などは逮捕されやすく、持っている情報は乏しい。しかし、捜査員は少年の交友関係やSNSのやりとりを徹底的に分析し、リクルーター役や受け子を束ねる元締役の男などを次々と摘発した。
捜査が新たな局面を迎えたのが、同年12月。元締役の男の関係先として浮上した東京都内のマンションの一室が、詐欺電話をかける「かけ場」であることを突き止め、「かけ子」の男3人を逮捕した。かけ子は取り調べで組織幹部とのやりとりを供述。この東京の拠点の摘発により、捜査は大きく進展した。
21年6~8月には住所不定の金沢雄大(38)、横浜市港北区の野々山宏(39)の両容疑者を詐欺容疑などで逮捕。2人は犯行用の携帯電話や銀行口座を準備する別組織との取引や、リーダーとメンバーとの仲介といった組織の主要な役割を担っていたとみられ、県警の担当者は「幹部級を逮捕できたことで、一気に組織の全体像が見えてきた」と話す。
そして今年2月、東京都港区の菅原広行容疑者(40)を詐欺未遂容疑で逮捕した。菅原容疑者の携帯電話から金沢、野々山両容疑者とSNSでやりとりしたメッセージが見つかり、その文面から県警は菅原容疑者が組織のリーダーだったとみている。組織は会社のように担当が細かく分かれ、菅原容疑者と面識があるのは幹部の数人だけだったという。