被害に遭ったラーメンノックアウト(同店提供)
ゴールデンウイーク初日、ラーメン店にとんでもない迷惑客が現れた。
「不味くてすいません!悲しかった!」という嘆きとともに、東京・足立区の「ラーメン ノックアウト」の店主・星野昌史さん(45)がひどい有様になったラーメン丼(どんぶり)の写真をツイッターに投稿した。
【画像】実際の被害「缶ビール丼」
大量の割り箸、小皿、ダスター、紙コップやビールの空き缶までぶちこまれ、料理への敬意など微塵も感じられない。弁護士ドットコムニュースは5月2日、GWも営業を続ける星野さんに話を聞いた。
●割り箸と空き缶によって麺もスープも覆われた
ツイートは4月29日の夜のもの。撮影された写真のあまりのひどさに、いいねとリツイートあわせて12万件以上の反響が寄せられた。その多くが、客への批判と、店主の心痛に寄り添うものだった。
「二度と外食するなって言いたい。どんな事があろうとも非常識過ぎる」「例え口に合わなかったとしても、これはないだろ」「謝らないで」
ツイートでは詳しい状況への言及はなされていない。星野さんがことの顛末を語った。
●酔っ払いながら店主の顔を指差して笑う客
「4月29日の夜8時ころに、50代くらいの男性がやってきて、ビールとチャーシューだけ、券売機の食券で買って飲み始めました」
男性は来店前からすでに酔っている様子だったという。星野さんの顔を指差して笑ったり、普通でない様子だった。
「サイドメニュー1品とビールでずっと飲み続けるような店じゃないので、ラーメンの注文をお願いしようと思っていましたが、しばらくするとラーメン(並=830円)を買ってくれました。お出しした後で、『バン!』と音がしたんです」
星野さんが確認すると、丼がカウンターの上にあげられ、ツイッターの写真のようなありさまになっていた。客はすでに店の外に出て行ったあとだった。
「大きな音は割り箸を入れた容器を机に叩きつけた音でした。これはひどいと思って追いかけて、こんなことをするならもう2度と店に来ないでくださいと言ったら、キレ始めてしまいました」
●除菌スプレーを店主に噴射する蛮行
「出禁」を言い渡された男性は、外にあった店の看板を持ちあげたり、顔を星野さんに近づけてきたり、店の感染防止対策用の除菌スプレーを使って星野さんに噴射するなど、暴れだしたそうだ。
また、ろれつが回らず聞き取りにくい発音で「うまくねえんだよ」と暴言を何度も繰り返したという。
写真には、転がったスプレーが小さく見える。これを店内でも噴射したり、投げつけたりしたという。店内には他の客もいる。暴れて言葉が通じない相手の対応は困難と判断した星野さんは110番通報し、警察に任せることとした。
駆けつけた警察官は「言ってることが支離滅裂だ」として警察署に連れていったという。
●こんなことをされたのに訴えない理由
警察からは「訴えますか?(被害届を提出するか?)」と聞かれたが、星野さんは「訴える気はありません。2度と来なければ、それでいいです」と断った。それきり、男性がどうなったかわからない。
男性の行為は、業務妨害や器物損壊に該当し、刑事でも民事でも法的責任を問われる可能性がある。星野さんはなぜ男性を罪に問おうとしなかったのだろうか。
「まず、美味い不味いの感覚は人それぞれなので、不味かったらしかたないところもあります。ただ、私はおいしいラーメンを作るために、毎日14時間働いています。100人いたら100人に美味しいと思われるラーメンを作るのは難しいけど、みんな寝ないで頑張ってるんです。(警察に)いろいろ話を聞かれたりする時間をかけられません。
今回、多くの人がツイッターで応援してくれたり、店に来たお客さんも『気にしないで』と声をかけてくれます。時間を使うんなら、私はそういう優しい人を大事にしたいです。
警察を呼んだのは、対応してもらうためです。罪を問うのはかわいそうじゃないですか。その人だって家族がいるかもしれないし、バレたら仕事をなくして人生を棒に振るかもしれません」
弁護士ドットコムニュース編集部