『ちょっとだけエスパー』は何を描こうとしている? マーベル映画との類似点などから考察


【写真】第5話でサプライズ登場した謎の「白い男」(麿赤兒)

 現在5話まで放送、配信されている本シリーズ『ちょっとだけエスパー』の内容について、ここでは今後の展開の予想と、シリーズ全体が果たして何を描こうとしているのかを考えてみたい。

※本記事ではドラマ『ちょっとだけエスパー』の5話までのストーリーを明かしています

 本シリーズは、超自然的な能力を微かに持つことになった者たち、すなわち「ちょっとだけエスパー」の活躍を中心に描く。主演の大泉洋が演じるのは、失職中の中年男性・文太だ。彼は就職活動中に「ノナマーレ」の社長・兆(岡田将生)に見込まれ、怪しい薬剤「Eカプセル」を飲まされる。それは、人間の隠れた能力を引き出す効果を持っていて、文太は“相手に触れると心が読める”能力を獲得することになる。

 ノナマーレの社員となった文太は、“花咲か系”能力を持った桜介(ディーン・フジオカ)、ものを温める“レンチン系”能力の円寂(高畑淳子)、“アニマルお願い系”能力の半蔵(宇野祥平)という、能力的にはあまり頼れるとは言えないが、近所に住む気のいい同僚たちとともに、チームとして未来の出来事を変える仕事に従事することとなる。

 不可解なのは、文太が年下の女性・四季(宮﨑あおい)と、夫婦を装って暮らすことを命じられる点だ。見知らぬ女性と暮らすという異様なシチュエーションにドキマギする文太。野木脚本らしい、男女が寝食を共にしながら“何も起こらないパターン”である。これは、そうしたお膳立てがなされたとしても安易に恋愛関係にさせないという、野木亜紀子自身のリアリティに根差した展開だといえる。それよりも気になるのは、どうやら四季は、本当に文太が自分の夫だと思い込んでいるのである。

 第3話では、そんな彼女の態度の理由が、悲惨な事故で夫を亡くしたショックにあったことが明らかになる。自傷行為におよぼうとしているところを、円寂が咄嗟の判断で「旦那さん帰ってくるわ。いまは長い出張に出てるの」となだめる。四季は自分の心を守るため、その明白な嘘を信じ込んだのだった。基本的にコメディタッチで進む本シリーズだが、このシーンは宮﨑あおいと高畑淳子の熱演によって、シリアスでエモーショナルな場面となっている。

 エスパーたちの境遇も、じつは暗いものばかりだ。桜介も半蔵も円寂も、一度社会から排除され世を恨んだ、訳ありの身の上である。主人公の文太もまた、集団での横領事件にかかわり一人だけ責任を取らされた過去を持ち、経歴が汚れ就職に苦労している人物。のほほんとしながらも、自殺をほのめかすシーンもあるほど、精神的に追いつめられていた。

 そんな人生に絶望した者たちが、ノナマーレの“人を救う”という理念のために、能力を活かしてミッションをやり遂げるべく奔走するのである。第2話は、そんなミッションの内容をベーシックに見せていく、いわば、“ゆるすぎる『ミッション・インポッシブル』”のようなお楽しみ回だった。

 超自然的能力を駆使して人々を救うという意味では、『アベンジャーズ』シリーズのようなヒーロー映画にも接近していく内容は、チームに敵対する市松(北村匠海)、久条(向里祐香)、紫苑(新原泰佑)によって構成される「Young3」の登場により、ヒーロー対ヴィランという構図があらわになっていく。

 だが、市松たちは文太たちこそがヴィランであると主張する。この考え方の異なるヒーロー対ヒーローの構図は、まさしく『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016年)を思い出させる。一般人に毛の生えた程度のこじんまりとしたバトルが展開する『シビル・ウォー』なのが微笑ましいところなのだが。



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